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短編映画の祭典 グランプリの名称が「ジョージ・ルーカス アワード グランプリ」に

6月17日(日)、明治神宮会館にて、『ショートショート フィルムフェスティバル & アジア 2018』(SSFF & ASIA 2018)のアワードセレモニーが行われた。

今年で映画祭も20周年。成人の年齢は18歳からになることが決まったばかりとはいえ、ついにこの映画祭もハタチになったかと感慨深いものがある。

毎年必ず何か新しいトピックを持ってくるこの映画祭。今年のトピックは、同映画祭の最高賞である「グランプリ」に新たに「ジョージ・ルーカス アワード」の名前が冠されたことである。ルーカスの名前が賞に冠されたのはこれが世界初という。これまでアカデミー賞公認として、アカデミー賞受賞監督を輩出してきた同映画祭が、ルーカスの名を冠してさらにパワーアップした感じである。

この栄えある最初の受賞作となったのは、シンガポール映画『カトンプールでの最後の日』だった。誰もがひとつは持っているであろう、子ども時代の淡い思い出を綺麗な色彩と巧みな演出で表現していることが高く評価されての受賞である。観覧席に座っていたイーウェイ・チャイ監督は、自分の名前を呼ばれるやその場で仲間たちと歓喜の声をあげ、抱き合ってからステージに登壇し、興奮で手を震わせながら重たいトロフィを受け取った。感極まった表情で、もう感謝の言葉以上に何も言葉が浮かんでこない様子だった。

あまりにもピュアな喜びぶりに筆者も思わずもらい泣きしてしまったが、今年もこの瞬間に立ち会えて本当に良かったと思う。世界中から夢を抱いた映像作家たちが、この映画祭のためにはるばる遠い国からやってくるわけで、映画祭が終わった後にはみんな素敵な笑顔で国に帰って行く。それにしても今年は本当に国際色豊かで、こんなにもこの映画祭に様々な言語の国の人々が参加していたのかと改めて驚かされた。受賞者スピーチでは、日本語と英語はもちろん、イタリア語、フランス語、韓国語、ロシア語と様々な国の言語が聞かれた。いったい通訳の人は何人いるんだろうと思ったほどだ。「自分の母国語でスピーチさせてもらえることに感謝する」と言った受賞者も多かった。このことはこの映画祭が世界から注目されている証といえよう。

同映画祭は、時代の流れに合わせて、毎年何か新しい部門の賞を野心的に新設してきたが、今年注目を集めたのはVRショート部門だろう。仮想現実を使った短編映画というまさに今ならではの賞である。プレゼンターに森崎ウィンを選んだところも通好みだが、MCの堀潤が「没入感」というVRの世界でよく使われる言葉を使っていたところもまた通好みで、この先の進展が楽しみになった。

来年には「女性応援プロジェクト」が始動することも発表された。これに参画する木村佳乃も登壇し、「少しでも女性と多くの作品を作りたい」とコメント。カンヌ映画祭でケイト・ブランシェットが映画界における女性格差について語ったことは記憶に新しいが、この時代の流れに乗った感じである。

女性といえば、この日は小池百合子都知事が登壇したことも大きな話題のひとつだった。「東京都知事賞」という賞もあるのに、ここで来ないわけには行くまい。小池都知事は東京を短編にして伝えるべく”東京ブランドプロジェクト”を発表し、「東京のシンボルといえば、富士山でも東京タワーでも雷門でもない。渋谷のスクランブル交差点だ。ニューヨークに来たらタイムズスクエアに行くように東京に来たら渋谷のスクランブル交差点に行く。だからロゴの見えないところに小さくスクランブル交差点の絵を入れいてる」と見事なスピーチで東京をアピールしていた。

このほか、アワードセレモニーでは、『シェイクスピア・イン・トーキョー』、『遠い時間、月のあかり』の2作品が上映され、ショートフィルムの魅力を伝えていた。映画祭は、6月24日まで開催している。(取材・澤田英繁)
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<受賞作品一覧>
SSFF & ASIA 2018 グランプリ「ジョージ・ルーカス アワード」
アジア インターナショナル部門 優秀賞(東京都知事賞)
『カトンプールでの最後の日』(シンガポール)
監督:イーウェイ・チャイ

インターナショナル部門 優秀賞
『不思議なヤギ』(イタリア)
監督:アンドレーア・ブルーザ & マルコ・スコトゥッツィ

ジャパン部門 優秀賞(東京都知事賞)
『THE ANCESTOR』(日本)
監督:小原正至監督

Cinematic Tokyo 部門(東京都知事賞)
『東京彗星』(日本)
監督:洞内広樹

学生部門 supported by フェローズ 優秀賞
『COCKROACH』(日本)
監督:キム・ヒョンギュ

第3回ひかりTVアワード
『ノヴェラ ピカレスカ』(日本)
監督:倉田健次

VR SHORTS 優秀賞
『Kinoscope』(フランス)
監督:フィリップ・コラン、クレモン・レオタール

LEXUS VR FILM AWARD
『Sanctuaries of Silence』(アメリカ)
監督:アダム・ロフトン、エマニュエル・ヴォーン=リー

CGアニメーション部門 優秀賞
『コトリのさえずり』(ロシア)
監督:ジャンナ・ベクマンベトヴァ

ノンフィクション部門 supported by ヤフー株式会社 優秀賞
『メリエム』(オランダ)
監督:ラベー・ドスキー
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<セレモニー登壇者>
代表: 別所哲也
フェスティバル・アンバサダー: LiLiCo
MC: 堀潤、望月理恵
公式審査員: リンダ・カンポス・オルシェウスキ、モーリー・ロバートソン、三池崇史、本仮屋ユイカ、千葉真一
CGアニメーション部門審査員: 中川翔子、新城毅彦、杉山知之
ノンフィクション部門審査員: 菊川怜、水上賢治(大友啓史は欠席)
学生部門審査員: 樋口真嗣、伊藤伴雄、野儀健太郎
ひかりTVアワード: 松居大悟、武田梨奈、細井鼓太
VR SHORTS: 森崎ウィン
東京ブランドプロジェクト発表: 小池百合子
ショートフィルム『シェイクスピア・イン・トーキョー』上映: ジェラルド・オドワイエー、ジェネヴィエーヴ・クレイ-スミス
ショートフィルム『遠い時間、月のあかり』上映: 和楽器バンド、尚玄、嘉人、岸本司
女性応援プロジェクト: 木村佳乃

2018年6月18日 02時27分

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