イランの女優タラネ・アリドゥスティが来日、アカデミー賞授賞式をボイコットした理由を明かす
6月7日(水)、渋谷区のユーロライブにて、イラン映画『セールスマン』の試写会が行われ、主演女優のタラネ・アリドゥスティが舞台挨拶を行った。
『セールスマン』は、イランの巨匠アスガー・ファルハディ監督の新作。日常が激変する心理サスペンス映画で、”感情のスペクタクル”と称するにふさわしい圧巻のクライマックスが待っている。ファルハディ監督は『別離』に続き、本作で二度目のアカデミー賞外国語映画賞を受賞したのだが、主演女優のタラネ・アリドゥスティはアカデミー賞授賞式の出席をボイコットして物議を醸した。
この映画のPRのためにテヘランから東京へとやって来たタラネは、なぜ授賞式をボイコットしたのか、その理由を話してくれた。
「トランプがアメリカの大統領になる以前からイランは国際的に長く対話をしていて、長くかかっていた制裁もなんとなく解除されて来ていました。これからイランが国際的にも経済的にも関係がもてるようになって、ようやくイランの情勢も落ち着いて来て安心していたのに、そんなときにトランプが候補になって、全国民が心配していました。イランがまた経済的に大変な状況におかれるのではないか。もしかしてまた戦争が起こるのではないかと不安でした。トランプが大統領になって、ちょうど『セールスマン』がアカデミー賞にノミネートされて、スタッフ・キャストも呼ばれるのではないかと思いました。イラン人はトランプ大統領によって突然入国禁止になりました。このとき飛行機に乗っていたイラン人がアメリカに着いたのに入国できなくなった様子が映像で流れているのを見ました。普通のイランの人々が行こうとして入国できないのに、自分が綺麗な服を着てレッドカーペットを歩くことは自分としてはできなかったのです。抗議する気持ちも込めてボイコットしました」
最後にタラネは「この時代は素晴らしい時代です。遠いところから映像を持って来てみせることができる時代が来ました。我々はいろんな国の文化を知ることができます。映画や芸術を通じてもっともっと人と近づくことができます。文化を知り心を知り近づいていけばもっと平和な世界が生まれるのではないかと思います」とコメントし、イベントは幕を下ろした。
『セールスマン』は、6/10(土)ロードショー