第9回したまちコメディ映画祭、21世紀の「寅さん」登場か?
9月16日(金)〜9月19日(月・祝)にかけて、台東区で、「第9回したまちコメディ映画祭 in 台東」が開催された。このイベントの顔であるいとうせいこうは、「したコメも今年で9回目。よく続いていると思う。この調子で記念すべき第10回を華々しく行いたい」とコメントしていた。
国立西洋美術館の世界遺産登録など、今勢いが乗りに乗っている台東区の地域活性化にも一役買っているこのイベント。今年も浅草の下町オレンジ通りでレッドカーペットイベントが行われ、数々の有名人が人力車に乗って登場した。
イベントの前後では雨空だったが、レッドカーペットが開始されるや、それがまるで嘘だったかのように雲が引き、太陽が明るく会場を照らした。ゲストの佐藤蛾次郎は「僕が晴れ男ですから。僕が来ると必ず晴れるんです」とニッコリ。『男はつらいよ』の撮影で着てきた本物の半纏をまとって来た佐藤は「第1作からずっと着てます。これと同じものはもう帝釈天にもないんですよ。もう着る事がないですね」とコメント。襟元がかすれてやぶけている貴重な衣装を見て、いとうせいこうも大興奮。「触っていいですか」と、伝説の衣装を興味深く見つめていた。この年は、コメディ栄誉賞に初めて映画監督として山田洋次監督が選ばれ、寅さんの故郷である葛飾区の区長もかけつけ、浅草ジンタ、ポカスカジャンらが寅さんにまつわるリスペクトライブを行ったり、『男はつらいよ』の世界をとことん盛り上げたのだった。
イベントのオープニング上映では、山下敦弘監督の新作『ぼくのおじさん』が上映され、主演の松田龍平と子役の大西利空が舞台挨拶に立った。ああ言えばこう言うの屁理屈ばかりのできそこないのおじさんと、そんなおじさんになぜだかついてくる甥っ子の2人の関係がユーモラスに描かれた作品で、寅さんよろしくマドンナに一目惚れしたおじさんが旅に出るというストーリーで、松田龍平演じるおじさんは、まるで21世紀版「寅さん」ともいうべきキャラクターになっている。上映中会場は終始爆笑の渦だった。こっそり客席から映画を見ていた脚本家の須藤泰司は、「お客さんの反応が気持ちが良いですね」と確かな手応えを感じていたようで、松田龍平も「待っている間、皆さんの笑い声が聞こえてきて、本当に幸せでした」と話していた。
このほか、浅草六区を創った知られざる人物を題材として、浅草の町へ敬意を表した作品『浅草・筑波の喜久次郎〜浅草六区を創った筑波人〜』も招待上映され、同作に出演している星由里子が「今日朝から一日中ずっと浅草にいて、浅草のことが好きになった」とコメントしていたように、ゲスト陣も、浅草の日本的な下町の情緒にすっかり癒された様子だった。