ブンロク

河崎実監督の素晴らしき映画愛 特撮ファン同士の結びつきを感じさせる『大怪獣モノ』登場

7月16日(土)より、ヒューマントラストシネマ渋谷ほかにて、『大怪獣モノ』という映画が公開される。この映画、ローテク特撮モノ・ファンにとってたまらない内容の映画になっている。

この映画を作ったのは河崎実監督という人である。今日はこの人のことについてたっぷり書きたいと思う。この人は、ちょっとした映画通にはよく知られている人で、『日本沈没』が大ヒットした頃、それに便乗して『日本以外全部沈没』を早撮りして公開した人だ。「ミスター便乗」と異名をつけたくなるほどの便乗のエキスパート。今回は『シン・ゴジラ』のブームにいち早く便乗するため、本家公開に先駆けて作り上げた。そのフットワークの軽さ、さすがである。

で、映画の内容はというと、巨大怪獣に、巨大化したプロレスラーが戦いを挑むというもの。ヒーローがウルトラマンのような格好に変身するわけではなく、そのまんま人間がでかくなる。映画を見る前はチープなイメージを持たれるかもしれないが、そこはストーリーの話術で、何違和感なく映画の世界を納得させるほどの勢いがある。

6月27日、ヒューマントラストシネマ渋谷で、関係者向けに本作の完成披露舞台挨拶が行われたので、僕も取材してきた。舞台挨拶には河崎監督と、主演を務めるプロレスラーの飯伏幸太(34)、『獣電戦隊キョウリュウジャー』の斉藤秀翼(23)、ヒロインの河西美希(26)、お色気担当の赤井沙希(29)が登壇した。

河崎監督は「この映画の責任者が僕です。すみません。『シン・ゴジラ』の便乗です。それ以外の何でもありません」と言って笑わせたが、「予算は『シン・ゴジラ』の1000分の1しかない。それでも僕はまじめに本気で大怪獣映画を作っています」というと「そうだ!」と観客から拍手が巻き起こった。映画館は関係者だけでも満席になっていて(ちなみに僕の隣にはなべやかんが座っていたぞ)、監督とキャストと観客で、ものすごい連帯感のようなものを感じさせ、ほっこりさせるものがあった。そして河崎監督が「これまでレスラーが怪獣と戦った映画はなかったんですよ。本作では現役レスラーが怪獣とガチで戦っています!」と語る口調はかなり力がこもっていて、本作のオリジナリティさにかける自信の強さをうかがわせた。まだ監督の映画を見たことがない人は、ふざけたような映画ばかりを作るイメージばかりを持たれているかもしれないが、思い直して欲しい。僕は監督のこの一言に映画作りにかける情熱の本気さを感じた。

特撮モノが大好きな人には、この映画はとても魅力あるものになっているだろう。とにかく登場人物の顔ぶれが通好みで凄い。『ウルトラマンレオ』こと真夏竜があられもないコミカルな役を演じているところ、こんな役を大真面目にやってもらって、何かすごくありがたい気持ちになってくる。特撮モノには欠かせない演技派・堀田眞三がいかにもそれらしい役で出て来たり、『世界忍者戦ジライヤ』の筒井巧が教授役で、初代ウルトラマンの中の人、古谷敏とウルトラマンジャックの中の人、きくち英一が防衛庁のお偉いさんを演じていたり、マニアックなキャストのオンパレードでそれだけでも見ていて楽しい。河崎監督はSNSでつながっている友達にも毎年欠かさず誕生日のメッセージを送る筆まめだけど、河崎監督ほどの信頼関係がなければ、これだけのキャストは集まらないと思う。

そしてカメオ出演のそうそうたる顔ぶれ。『ウルトラマンA』ヒロインの星光子、『宇宙刑事シャリバン』主演の渡洋史、『科学戦隊ダイナマン』ピンク役の萩原佐代子、『超電子バイオマン』ピンク役の牧野美千子、さらには『ウルトラQ』の西條康彦も。これだけは手放しで褒められるのは、河崎監督はカメオキャストの使い方にかけては日本で右に出る者がいないということだ。ただ出てきただけでも「おお!」と心の中で思ってしまう感動がある。この感動を描ける監督は河崎監督をおいて他にはいない。まるで特撮モノの同窓会のようである。ちなみに、この日の映画館でも、観客みんなで楽しく笑いながら映画を鑑賞して、見終わった後もみんなで語り合い、まるで同窓会の様相だった。マニアックな映画のため、赤の他人同士でも会話が弾んだりする。映画館での触れ合いがあるのも河崎映画の魅力のひとつだ。

実は僕、この映画で初めてエキストラに挑戦している。群衆のシーンでは、河崎映画のファンがみんな集まって一緒に映画を作った。もちろん全員ノーギャラだ。ここにも河崎監督の絆の輪がつながっている。僕も河崎監督とSNSでつながっている縁もあって、監督が提示したエキストラの出演条件が「地球人であること」だったので、その言葉に甘えて参加させてもらった次第だ。ビルを見上げて見えない怪獣を想像しながら叫ぶのはなかなか楽しいものだった。

ポインターによく似た自動車に乗ってスタジオに毒蝮三太夫が現れるとエキストラ一同、「おお!」と声をあげたのを覚えている。やはりオーラが違った。撮った映像のほとんどが本編には映らなかったけど、長い長い時間をかけて1分の映像を作っていく工程を見られたのは、かけがえのない経験になった。映画を見て、自分の姿を見つけることもできた。一瞬だけどしっかり映っていた。生まれて初めて自分が映画館のスクリーンに出ていて何か感慨深いものがあった。エンドロールにも自分の名前を確認した。名前がクレジットされたのも人生初の経験だ。みんなで一緒に映画を作ったという思いを享受することができた。特撮モノの大家らそうそうたる顔ぶれが登場する本作に、一瞬でも出られたことを僕は誇りに思う。(澤田英繁)

2016年7月7日 12時28分

新着記事

KIYOMASA君
KIYOMASA君
(ブンロク公式キャラクター)