葉七はなこ 母への感謝の気持ちを映画で形にした新人監督
11月1日(日)、中野で行われている「新人監督映画祭」で、『かあちゃんに贈る歌』が上映され、この作品で映画デビューした葉七はなこ監督が舞台挨拶に立った。
「新人監督映画祭」では数々の新人監督作品を上映しており、中野を中心に映画文化を高めて行く目的がある。この映画祭に参加した葉七監督は、以前、このサイトでも紹介していたこともあり、その縁もあって、個別にインタビューすることができた。
『かあちゃんに贈る歌』は、葉七監督自身の体験を映画化したものである。寝たきりになった母を在宅介護して、母のために歌を作曲してプレゼントした。父親が亡くなったときも決して泣かなかった母が、歌をもらったときにはぽろぽろ涙を流して泣いたそうで、このときの母への思いが映画の中にも感動的に描かれている。
葉七さんは、新人監督も新人監督で、映画の作り方を知っていたわけでもなかった。それなのに、どうしてこの作品が見る人の胸を打つのだろうか。それは、葉七監督が、素直に心から伝えたいものがあったからではないだろうか。すなわち、それは母への感謝の気持ちである。その意味ではリリー・フランキーにも通じるものを筆者は感じている。映画好きな映画学生が映画を作りたいから映画を作ったのではなく、伝えたいことがあったから、それを伝えるために映画を作った。そんな心意気を感じさせる映画になっている。その意味でも他の新人監督とは一線を画す。低予算でもソウルをこめれば良作になるのだ。
介護をテーマにしていることから、葉七監督は、映画の上映後には必ず福祉関係の方を招いて介護体験会を実施しているという。この日もデイサービスをやられているフリージア株式会社代表の五十嵐由佳さんを招いて認知症予防トレーニングの体験会を実施していた。五十嵐さんは上映後「私は介護バカなので、介護の映画を撮ってくれて嬉しいです」と感謝の言葉を贈っていた。
現在は葉七監督は、介護職員と利用者の絆、地域との絆、仲間との絆をテーマに描いたドキュメンタリー『絆つながって生こか』を制作中だ。現実をありのまま捉えることは、ドラマ映画にはない感動がある。すべてが本当に起きていることだから、「撮影のときは感動で涙が止まらなかった。これを自分の代表作にして、人々の心に残る映画にしたい」と話していた。(取材・澤田英繁)