ドイツに負けるな、日本のアナログゲームの世界はこんなにも奥が深かった
ブンロク編集部が初めて発売するアナログゲーム『秀吉軍団』の開発に向けて、アナログゲーム業界のリサーチのために、5月5日(火曜・祝日)に東京ビッグサイトで行われた「ゲームマーケット2015春」に行って来た。
ゲームマーケットとは、株式会社アークライトが主催する電子機器を使わないアナログゲームの即売会である。冬・春・秋と年に3回行われているのだが、僕にとってはこのイベントは初体験であり、見る事すべてが真新しく、とても刺激にあふれた取材となった。
僕はテレビゲームで育った男なので、あまりアナログゲームには縁がなかった。テレビゲームはテレビCMも頻繁にやっているし、ブームは衰える兆しをまったく見せていない。しかし、その一方で、アナログゲームも非常に盛んに作られているのである。とくにドイツはその先進国であり、数々の傑作ゲームが毎年生み出されている。日本もドイツに続き、アナログゲームの評価は世界的に見ても高く、根強いファンが多い。ゲームマーケットは、そういったファンのために開催されている即売会であり、アナログゲームファンがそれぞれ自分の思いの詰まったゲームをこの日のために製作して販売している。海外バイヤーの注目度も高く、開場から1時間で新作商品が完売するブースも多かった。今回の来場者数は8500人を超えたというから驚くばかりである。
編集部もゲームマーケットに挑戦
そもそも僕がなぜアナログゲームの世界に興味を持ったのかというと、去年友達と一緒に遊んだ「スコットランドヤード」にただならぬ衝撃を受けたからである。大げさではなく、あの体験は僕の人生においてかなり大きなものだった。テレビゲームでもないのに、こんなにも面白いものが作れるのかという驚きである。僕はすぐにこの世界に興味を持ち、「自分も何か作ってみたい」と思うようになった。
それから間もなく、我が編集部でも、独自にカードゲームを開発してみることになり、だいぶ形になってきたのが『秀吉軍団』というゲームである。誰でも楽しんでもらえるように戦国時代というポピュラーな題材をとっている。今回はゲームマーケットに一取材者としての参加だったが、次回のゲームマーケットでは『秀吉軍団』をひっさげて出展者として参加するつもりである。今回はその事前リサーチもかねての参加だったわけだが、手応えは十分にあったと思う。
各ブースにおのおのの個性
ひとつひとつのブースに声をかけて回り、どういうゲームを作っているのか聞いてみたが、どのブースもおのおの個性的なアイデアを出していて、学ぶべきことが多かった。完売しているブースも多かったが、製造した部数をきけば100個というところもあれば、10個だけというところもあり、予算の違いとはいえ、結構なへだたりがあった。流通してもおかしくないくらいしっかり作っているところもあれば、パソコンのプリンタで印刷して手作りしたものもある。いずれにしても彼らがゲームにかけた情熱は同じで、いずれも買い手は多かったように見えた。
皆さんのお手並み拝見ということで、僕も勉強のためにいくつかカードゲームを買ってみた。これも取材の一環である。中にはよくできたゲームもあったが、正直、見た目だけは立派でもゲームの内容がつまらないものが多かったのは残念であったのと同時に、自信にもつながった。それでもゲームは普通に売れているのだから、しっかりした内容のものを作れば確実にユーザーの支持は得られるのだと僕は確信するに至った。その点では、手前味噌ながら『秀吉軍団』はゲーム内容にかなりの自信を持っているので、次回のゲームマーケットでこれがどのくらい注目されるのか興味津々である。
この業界に『秀吉軍団』で挑戦状を叩き付ける
批判されるのを承知でこの場を借りて告知させてもらう。僕はアナログゲーム業界の中でも新風を巻き起こしたいと思っていて、『秀吉軍団』はクラウドファンディングを使って出資者を集めている。この記事の読者の方にもぜひ協力をお願いしたい。即売会で直接本人から商品を買うのも悪くないだろう。こういうクラウドファンディングという形で商品を買うのも、ひとつの経験として面白いのではないかと思う。弊社はこれまでは映画ニュース配信事業を中心に活動を続けて来たが、まったく畑違いだった弊社が、突如アナログゲーム業界に挑戦状を叩き付けたわけだから、この『秀吉軍団』がどんなゲームになっているのか、その手並みを確認していただきたい。新参者でもここまでやれるということを見てもらいたい。とにかく『秀吉軍団』が世に出るかどうかは、ここで皆さんの支援がどれだけ集められるかどうかにかかっているのだから。
『秀吉軍団』の詳細はこちらから。
https://www.makuake.com/project/hideyoshigundan/
そろそろ本題、出展ブースレポート
脇道にそれすぎてしまい、申し訳ない。そろそろ本題に入る。各ブースでどういった作品がどのような感じで売られていたのか、その雰囲気をこれから写真で伝えて行きたいと思う。
僕が驚いたのは、日本には一年間だけでもこんなにもたくさんのアナログゲームが作られているという事実である。そのほとんどがこの場所でしか手に入れることができないものばかりだから、この世界はほじくればめっちゃ奥が深いってことだ。たくさん埋もれている名作ゲームもあるだろう。この数えきれないゲームの中から、ぜひあなたも名作を発掘して欲しい。
「ひつじとどろぼう」。ブースによっては、このような試遊台があり、実際にプレイしてどういうゲームなのか体験することができる。
カナイ・セイジ氏率いるカナイ製作所のブース。新作「Eight Epics」は完売。名作「Love Letter」もチューインガムになって再登場した。「マギアレーナ」なども通常店舗で買うよりもだいぶ安い値段で売られていた。カナイ氏が手売りしていたときには会場外まで長蛇の列ができていた。さすがである。
「HANABI」のアントワーヌ・ボザ氏(右)がフランスから来日。トークイベントも開催された。
「心霊写真」は、スマホを使ってカードにお化けの映像を投影する画期的な内容だった。半分はアナログ、半分はデジタルで、こういうゲームも今後増えて行きそうだ。
もんはみマガジェットのブースでは「まいっちんぐマチ子先生のスカートめくり」などを展開。メードの娘とじゃんけんに勝てばいいことがあるかも。それぞれのブースが様々なアイデアでゲームを売っていた。
わざわざ遠い台湾から飛行機でこの日のために飛んで来たBigFunの楊さんが売っていたのは「城隍神と夜冥の将軍」というゲーム。メイド・イン・台湾のカード品質はかなり高かった。
堀場工房の「猫と缶詰とお皿」は、パッケージやゲームに使用するミニチュアにもこだわりを感じさせる。猫好きにはたまらないだろう。
「ピクテル」は、カードゲームはカードゲームでも透明のカードゲーム。重ね合わせることでゲーム展開が変わっていく。
冒険企画局は楽器を使ったゲーム「弦楽師体験ゲーム バイオリニスタ」を披露していた。スケールがでかい。このゲームはバイオリンをよく知らない人ほど楽しめるという。(ちなみに冒険企画局が昔発行していた「ファンタジーRPGクイズ」は筆者にとって青春の一部になっている)
「お蜜柑様」は、本物のみかんを使ったゲームだ。いったいどういうルールで遊ぶのか、遊び方が気になる。
「アラビアの壺」は、壺を振って鳴らす音を利用したユニークなゲームだった。どのブースでもこういった変わったアイデアのゲームが売られていた。
「こねくとこねくと」は、あみだをゲームにしたもの。子供の頃、誰しもあみだを描いて遊びまくったものであるが、そんな遊び心をこうしてそのまま売り物として形にすることはゲームマーケットの醍醐味といえる。
最後に各ブースの様子をフォトギャラリーにした。時間内に回れるだけ回ったが、開場が17:00までだったこともあり、16:00を過ぎたときにはすでに撤収していたブースも多く、すべてを回り切れなかったのが悔やまれる。また、行列ができていたブースはお邪魔してはいけないと思いスルーさせてもらった。実際は300以上の企業・団体が出展していた。雰囲気が少しでも伝われば幸いである。(澤田英繁)