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『繕い裁つ人』中谷美紀が50人のスタッフに鴨汁を振る舞う

1月31日(土)、新宿ピカデリーにて、『繕い裁つ人』の初日舞台挨拶が行われ、主演の中谷美紀と、共演の三浦貴大、黒木華、監督の三島有紀子が登壇した。

これまで職人をテーマとした作品を撮り続けてきた三島有紀子監督の最新作のテーマは「衣」である。神戸を舞台にした本作には、阪神・淡路大震災で感じた気持ちが込められている。パン職人を描いた『しあわせのパン』では横のつながりを、ワイン職人を描いた『ぶどうのなみだ』では縦のつながりを描いたが、『繕い裁つ人』では、仕立て屋を通して、「内面に向き合うこと」を描き出した。横と縦を描いたら、今度は内側にたどりついたというわけだ。

中谷はこの作品のために、撮影前から1ヶ月、足踏みミシンの特訓を受けた。布をまっすぐに繕う練習をしているうちに、そのうち何か形になるものを作りたくなった中谷は、監督のためにケープを手作りしてプレゼントしたという。初日舞台挨拶では、そのケープがお披露目されていたが、中谷は「ケープが一番作るのが簡単だったので」と謙遜していたが、監督は「夜も寝ずに、ボタンも神戸で探してくれたんです」と感激しながら話していた。

真冬の寒いときに、撮影現場でポカポカ暖かい豚汁や鴨汁や中華スープを作ってスタッフ・キャストに振る舞ったこともあったという。といっても50人くらいいるわけだから相当な量である。中谷は本当に気が利く人で、そういえば、いつだったか、マスコミ報道陣全員にお茶を振る舞ったこともあった。こういうことはなかなかできるものではないし、舞台挨拶でもこういうエピソードはなかなか聞かない話である。監督は「座長としてみんなの士気を高めてくれた」と話していたが、こういう話を聞くと、中谷が毎年コンスタントに映画に主演し続けているのがわかる気がする。本当に毎年当たり前のように映画に主演していて、中谷が主演と聞いても当然すぎて驚かない。去年東京国際映画祭のアンバサダーを務めたときも、まったく違和感がなかった。マスコミにとっても、何か身近な存在に思えてならない不思議な魅力のある女優である。

三浦は、雨男らしく、いつも三浦が来るところには雨も来るらしく、中谷も舞台挨拶では「雨が降るから来なくていい」とたびたびそれをネタにして三浦をいじる一面も見せていたが、黒木は「中谷さんが晴れ女なので、しっかり初日は晴れにしてくれました」とうまくまとめていた。

なお、この日は、映画の世界を忠実に再現した刺繍も披露された。世界にひとつだけの、まるで絵画のごときディテールにこだわったブラザー社(本作の協賛メーカー)渾身の一品、まさに職人技といえる代物であった。(澤田英繁)

2015年2月1日 21時42分

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