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自民党・安倍晋三総裁と民主党・海江田万里代表の演説レポート

衆院選選挙戦の最終日となった13日、自民・民主の党首演説を取材した。今回筆者が取材したのは、渋谷駅前で行われた民主党の海江田万里代表(65)の演説と、秋葉原駅前で行われた自民党総裁・安倍晋三首相(60)の街頭演説である。筆者はこれまで芸能ニュースばかりを取り上げて来たそちらの畑の人間だったので、政治的な報道はまだ不慣れなところがあることをご容赦願いたい。取材でも受付がなく、いまいち手続きがよくわからずに落ち着かなかったが、なんとか無事に取材を終えることができた。対照的な演説だったので、ここにレポートを書きたいと思う。

まずは、野党の民主党の海江田代表の方から。東京7区長妻昭の応援のため、ハチ公横の広場前に車を止めて演説していた。そばに立ち止まって演説を聞いていたギャラリーは50人から100人くらい。およそ20分ほど演説して終わった。

海江田さんが話していたことをまとめるとこういう感じになる。

(1)安倍さんの労働者派遣法は改悪の法律である。若い人、派遣で働いている人は、派遣法が通ると、一生派遣で働くことになる。民主党が今年の春の国会で、こんな法律ダメだということで否定したもの。民主党の議員たちががんばって、この法律を葬り去った。日本の国では非正規社員で働いているのは4割。こんな多くの人が正社員以外で働いていることは、日本の歴史でもなかった。世界でもこんな国は他にない。正社員以外の働き方を否定しているわけではないが、同一労働同一賃金という原則がなければ、派遣は企業にとって使い勝手の良い労働者になってしまう。これではいけない。若い人たちがすべてちゃんと正社員として働いて、希望する人たちが結婚をして、希望する人たちが子育てをする、こういう世の中にしなければいけない。

(2)経済的な理由で子育てができない社会をこのままにしていいはずがない。私たちは働く人たちの雇用を安定させて、ちゃんと賃金が入って来て、そしてその賃金を自分の人生を豊かに、自分の生活を豊かにするために健全な消費を行っていくようにしていかなければいけない。国の経済の6割までが個人の消費に頼っている。個人の消費が落ち込んで、どうして経済が回復するのか。

(3)民主党の政治は「人を大切にする政治」である(ここでギャラリーから1人「そうだ」と叫ぶ声)。安倍さんは、日本を世界で一番企業が活躍しやすい国にすると、はっきり言っていた。これは違う。一国の総理大臣なら、日本の国民が一番幸せになれる、日本の国民が活躍できる国にする、そう言わなければおかしいのではないか。

(4)集団的自衛権について。私たちは「これは大変大きな問題だ。国民の命に関わる事だから、これはちゃんと議論しなければいけませんよ」とずっと言っていたが、安倍さんは「まだそれは、外部の有識者に議論をお願いしているところ。まだその議論を待っている段階だから、これは政府から責任のある答弁はできません」と言ってずっと議論を先送りして来た。そういっている間に国会を閉じてしまって、7月1日に閣議決定した。こんなやり方はない。私たちはこの閣議決定を白紙撤回しろと言っている。当然のことである。安倍さんは国会での議論が嫌いで議論を無視をしている。

(5)急激な円安によって物価があがった。しかも、食料品は外国から輸入をしているから食料品の値段もあがった。私の大好きな某牛丼点の牛丼も17日の午後3時から今まで300円だった並の牛丼が380円になった。一挙に27%の値上げである。これはまさに円安によって輸入をしてくる牛肉が高くなったからだ。だけど、働く人の賃金はちっとも増えていない。年金生活者の方々は増えていないどころか手取りが減っている。

(6)これが現実である。これが生活の生の声である。だからその声を国会に届けなければいけない。私たちは国民の皆さんに代わって国会でしっかり議論するから代議士と呼ばれている。しかし、安倍政権になってからの国会では、ほとんど自民党がこの委員会の運びを決めている。会議を開くことを反対して特定秘密保護法の問題も強引に押し進めてしまった。これ以上自民党の数が増えたら、国会の議論がなくなってしまう。これでは法律の問題点が全然明らかにならない。国民の声を政権にぶつける機会もなくなって来る。この2年間、そういうことが現実に行われていた。

(7)この選挙で自民党の議員を増やしても、それぞれの地域で自民党の議員を国会に送っても、それは皆さんの声を代弁して国会で議論することにはならない。安倍さんの言う通り、機械的に立って賛成といって椅子に座る、いわゆる法律を通すだけの採決をするだけのマシンである。安倍政権の政治には危ういものがある。これにしっかりと歯止めをかけていくのは、野党の議員、心底国民のためにがんばってくれる民主党の政治家である。そうした民主党の議員を国会に送り込んで、皆さんの声をしっかり国会で代弁をして、議論をする国会にしなければならない。安倍さんは民主主義を空洞化しようとしている。私たちの民主主義は「熟議の民主主義」である。十分を議論しなければならない(ギャラリーから「そうだ」の声)。
 
(8)消費税の問題について。いつか我々は10%にあげなければならないときが来る。このためには熟議をして、安倍さんのように機械的に1年たったらあげると、経済の状況も関係なしに決めてはいけない。やはり国民の皆ひとりひとり議論をして、国会の中の議論を通じて理解をしてもらわなければいけない。そうしてあげた消費税の使い道を国会の中の議論を通してしっかり監視しなければいけない。安倍さんは消費税をあげたが、景気が悪いということを口実にまた公共事業が増えた。なんのための消費税増税だったのか。

続いて、場所は変わり、秋葉原はガンダムカフェ前の広場で行われた自民党の演説である。ここは東京1区である。この地区の対戦相手は、民主党党首・海江田代表その人だ。自民党は山田美樹という無名の女性が敵総大将を相手にがんばっている。安倍首相は「ここを決して民主党に渡すわけにはいかない」と宣言し、最後の選挙演説の場所に選んで応援にかけつけた。

先ほど書いたように、筆者は不慣れだったため、報道の腕章など準備をしているはずがなく、ここで警視庁に「腕章をつけてください」と注意されたので、しぶしぶプレスエリアを退散。筆者は一人の一般人として群衆の中から撮影させていただくことにした。

ギャラリーの数はというと、もはや測定不可能。見当もつかない数だったが、ざっと5000人くらいは立ち止まって聞いていたように思える。マスコミの数も100はあっただろう。演説している人が何かいうたびに「そうだ!」という声があがって、日本国の国旗を振る人も多かった。それはまるでコンサートイベントに来ているかのようであった。石原伸晃が出て来て「相手は海江田さんだ。ここを制することで勝敗が決する。ここは天王山である」と叫んだところから、俄然盛り上がって来た。そして最後の最後になって勇壮なBGMに乗せて安倍首相と麻生太郎が登場すると、ギャラリーの女性たちから「キャーキャー」という黄色い歓声があがっていた。麻生さんは、開口一番「普通候補者はこういうときには一番温かく迎えてくれる地元にいるもんですが、なんとなく、秋葉原に来ると、ここは地元かなぁとともかくそう思います」と言って笑わせてくれた。

麻生さんが話していたことは次の通りだ。

「目的は長引くデフレ不況からの脱却である。なぜ長引いたのか、答えは簡単である。先の戦争に負けて70年、日本は数々の不況を乗り越えて来たが、それはいずれの不況もインフレだった。今回は初めてデフレである。デフレをやったことがないからデフレ対策をわかるはずがなかった。したがって外務省も日本銀行を対策を間違えた。この間違いを正せるのは政治しかない。我々は日本銀行との間に共同線を出してデフレをインフレにする。ターゲットは2%である。我々はきちっとその対応をやらせていただき、おかげさまで景気はよくなりつつある。雇用も150万人増えた。しかし、今ひとつ消費がのびない。皆さん方の懐にはまだ届いていないということである。したがって、消費税の増税をあげるのを1年半のばさせていただき、今から28ヶ月後の平成29年4月には必ず消費税は2%あがることになるから、そのときには皆さんが、あと2%くらい消費税があがっても良いと思ってもらえるような景気にする。それが我々の今回与えられている使命である。必ず景気を良くしてみせるという決意のもとに我々はこの政権を再び組閣してきちっとやっていかなければならない。我々がやらればならないことはいっぱいあるが、まずは景気である。ぜひ皆様のご理解を」

最後に、安倍首相が登場し、次のように話した。演説は20分程度。

(1)民主党の3年3ヶ月は間違いだった。2年前、この景気をなんとかしようと言って、政権を奪還し、いわゆるアベノミクスを前に進めて来た。アベノミクスは会社企業の生産性や競争力を強くして、儲ける力を強くし、それによって雇用を増やし、賃金をあげて、景気を回復していく。この経済の好循環を回していくことで15年間苦しんだデフレが脱却をし、経済を成長させ、そして皆さんの生活を豊かにしていく政策である。簡単に言えば私たちの政策は雇用を増やし、賃金をあげていくことである。民主党時代は雇用が3年3ヶ月で3万人減っていたが、我々はマイナス3万人からプラス100万人に変えた。

(2)高校を卒業し、大学を卒業して就職する皆さんの内定率もあがっている。とくに高卒の皆さんは内定率が10%あがっている。私たちの政策が実を結びつつある。賃金も平均して2%以上あがった。これは15年ぶりの事だ。ボーナスは7%あがった。24年ぶりのことだ。パートやアルバイトで頑張って汗を流している皆さんの時給は平均で1050円になった。これは統計を取って以来最高の数値である。私たちは雇用を増やし、賃金をあげることができた。でも「安倍さん、まだなかなか実感できませんよ」という方々がたくさんいることを知っている。皆さんにこの景気回復の暖かい風を受け取っていただけるよう、中小企業、小規模企業、一生懸命汗を流したみなさんにも実感していただけるよう、この回復の暖かい風をお届けしていくことがこれからの私たちの使命である。

(3)なかなか実感できないひとつの大きな理由は4月の消費税3%引き上げである。この3%ひきあげは社会保障費、年金や医療や介護、世界に誇るこの社会保障制度を次の世代に渡して行くために必要である。子育てをし、難病支援をしていく。ただ残念ながら、給料を2%あげることはできたが、3%の消費税についていくことができなかった。そこで消費が減った。私たちは話し合い、1年半先延ばしすることにした。1年半引き延ばして私たちの政策を進めていけば賃金はあがって行く。そして再来年の春、消費税に対応できる強い経済力を手に入れることができるはずだ。

(4)「今円安で大変だ」という声もあるが、我々は経済対策でちゃんと対応して行く。「借金だって大変だよ」という声もある。私たちは中小企業、小規模事業者の皆様にも融資に対する返済を猶予するように金融機関に要請している。たしかに円安には課題がある。円安対策をやっているが、だからといって民主党時代の円高に戻してはいけない。

(5)あの円高時代、どんなに良い物を作っても、円高のために競争力を失っていた。世界中で優秀な製品が韓国製や中国製に負けていた。メーカーが海外に拠点を移した。東芝は4つの大きな工場を閉めた。東レは工場を韓国に移してしまった。民主党政権時代、なんと海外への投資が倍になった。下請け事業はついていけない。ついていけないから工場も閉めざるを得なかった。私たちは新たな政策でこの経済状況を一変させた。その結果、日本の多くの企業が、「やっぱり日本で物を作ろう」と態度を変え始めている。4つの工場を閉めた東芝が、今度は日本に工場を作って、日本人を雇って、そして日本で税金を払って行くことになった。工場を韓国に移し始めていた東レが日本に工場を作った。

(6)そしてトヨタが水素エネルギーを作った燃料電池車、究極のエコカー、この車をいよいよ発売する。名前は「MIRAI」。このため私たちは25の規制を全部撤廃して、水素ステーションもしっかりとつけられるようになった。この「MIRAI」。燃料電池も車体もトヨタが日本で作ることを決めたのだ。民主党の政権が続いていたら、この自動車も恐らく外国で作ることになっていた。日産もエンジンをアメリカで作ると決めていたが、私たちの政権ができて、日本で生産することに変えた。この結果、日本の倒産件数は2割減った。

(7)よく「円安で倒産が民主党政権時代より増えた」と言っているが、それは確かにそうかもしれない。民主党政権時代には円安倒産はなかった。それは円高だったのだから当たり前ではないか。円安よりも円高は遥かに仕事を奪うのだ。このことを私たちは決して忘れてはならない。

(8)かつて1ドル80円だった。今は120円。ということは800万人だった海外からの旅行者が今年は1300万人になる。外国からの旅行者は日本からの旅行者よりも多くお金を使う。この秋葉原で5万円〜10万円の炊飯器が飛ぶように売れている。さらにもっと多くの外国人に日本に来ていただき、お金を使ってもらう。それは日本の富が蓄積していくことになる。日本の競争力を、日本の魅力を私たちは大いに発信して行きたい。

これで演説は終了。他に安倍さんが民主党のCMを批判するコメントもあった。

面白かったのは、すべてが終わった後も、どこかから凄い罵声が聞こえて来たので、何事かと思って近づいてみたら、マスコミが群衆に罵声を浴びせられていたのである。「反日の朝日は日本から出て行け!」「マスゴミが!」と群衆が連呼していた。苦々しい顔をする記者たち。こういう出来事はテレビなどでは伝わってこないこと。現地に行ってみて初めてわかることである。

筆者は腕章がなかったので、一応一般人側の立ち位置であったが、朝日系のメディアを罵倒する群衆というものはなかなか見られない光景だったので、記念にiPhoneでその様子を撮っていたら、筆者のその立ち居振る舞いから報道の人と思われたようで、「何勝手に撮ってるんだよ!」と絡まれてしまった。相手も興奮していたし「俺たちをまるで犯罪者みたいに撮りやがって。ハゲ、一般人をなめるなよ!」とか言ってて何も話は通じなかったけど、警察官たちが守ってくれて、相手が立ち去ってくれた。ふぅ、これが政治系の報道の世界という奴か。しかし、多分冷静に話せばわかる相手だったと思うので、仲直りできなかったのが悔やまれる。もやもやした状態のまま帰宅することになった。

なんだか最後は全然違う話になってしまったが、与野党両方の演説を聞くことは、自分にとっても非常に勉強になった。30分の演説でもテレビ報道では30秒にカットされて、それがSNSなどで拡散されると、大きな誤解を招いたりもする。ちゃんと自分の目で見ることは大切なことだと、そう思わせた一日だった。

2014年12月14日 03時36分

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