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『くるみ割り人形』有村架純の声がこんなにも可愛かったなんて

11月29日(土)から公開中の3D人形アニメーション映画『くるみ割り人形』を見た。サンリオの40周年を記念した本作は、今から35年前にサンリオが制作した人形アニメーション映画を「リ・クリエイト」したものである。アートディレクター/アーティストの増田セバスチャン(44)が初監督し、当時のフィルムをもとに、色彩はより鮮やかに、丁寧に3D化して作り直した。また、有村架純(21)、松坂桃李(26)ら現代の人気俳優たちが集結して新たに声を吹き込んでいる。丸の内ピカデリーでは公開初日にメインキャストと監督が登壇し舞台挨拶を行った。この舞台挨拶の「出し物」が非常に良かったのと、作品自体もとても意義のあるものだったので、それぞれについて書かせてもらう。

まず舞台挨拶について。登壇したのは、有村架純、松坂桃李、藤井隆(42)、板野友美(23)、増田セバスチャンの5名。イケメン担当が松坂で、増田監督がボケ役的立ち位置、藤井が見事なツッコミ役に立って、非常に愉快な内容の舞台挨拶になった。有村が小学生の頃の思い出を語り、「声を演じていて好きな男の子がいたことを思い出した」などと話していると、増田監督が「それを聞いてショックを受けた」としょんぼり。すると藤井が「小学校のときくらい好きな男の子がいたっていいじゃないですか。今の話をしているわけじゃないからいいじゃないですか」と突っ込むといった調子である。

続いて、タイトルの「くるみ割り」にひっかけて、「割り」のつくことをみんなでそれぞれやることになった。板野は「鏡割り」で、有村は「くす玉割り」と、ここまでは普通だけど、藤井は「スイカ割り」という何とも季節外れなシチュエーションでここでもお笑い要員に徹する。どうやら透けて見える目隠しをしていたようだが、藤井は「ほんと、全然見えないんですけど!」といいながら何度もステージから落ちそうになるお約束のボケっぷりで会場を爆笑の渦に巻き込んだ。

注目すべきは、松坂が挑戦した「瓦割り」だ。スクリーン前にやおら10枚積み重ねられた本物の瓦。これは冗談でもなくガチであった。松坂はこうなることを聞かされていなかったようで、「控え室になぜか瓦があったんですよ。それでスタッフに一枚どうですか?と言われて、試しに叩いてみたのですが、手の皮が剥けちゃって。本当に大丈夫ですか?と聞いたら、2・3枚くらいならなんとかなりますよって言われて・・・」と苦笑い。経験ゼロ、いきなりのぶっつけ本番ということで、スタッフもこれはまずいかもしれないと思ったのか、いったん進行を止めて、グローブを取りに行ったのだが、それが逆に場内を緊迫したムードに包み込むことになった。そこは藤井が機転を利かせて「何かあれば裁判に一緒に行きますよ。僕全部見てましたから証言します」と言ってうまく場を和ませた。松坂は、直前に真剣な表情を見せ、見事に一撃で全部を割って見せた。会場は大歓声である。しかし、これに一番驚いていたのは松坂本人で、砕け散った瓦を見て目を丸くしていた。

それにしても、それぞれうまい具合に「割り」のつくアイテムを絶妙のキャスティングで演出したものである。笑いあり、驚きあり、本当に出来過ぎなほど愉快な舞台挨拶であった。この企画を考えた人って、もしかしたら天才じゃないか。

さて、映画の方だが、この映画、とにかくひたすらに「可愛い」。増田監督も「Kawaii文化」を意識して作ったというが、人形のてくてくした動きといい、表情といい、見ているだけでニコニコしてくる愛くるしさだ。しかも主題歌は「Kawaii文化」のリーダー格ともいえるきゃりーぱみゅぱみゅが歌うという抜かりの無い布陣。

そして有村架純がこんなにも声がチャーミングだったなんて。ジブリ映画に主演した『思い出のマーニー』とはまた違っていて、新しい発見があった。有村は、おそらく今年一番忙しかった女優だが、どうして彼女がそれだけ人気があるのか、今回取材してわかる気がした。何と言っても、有村はくす玉を割ったときの仕草がめちゃくちゃ可愛かったのである(フォトギャラリーの写真でも多分その愛嬌が十分に伝わって来ると思う)。

この映画、さっきから書いているように、とにかく可愛いのだが、実はそれと同時に非常にダークで怖いものでもある。子供向けのアニメーションの持つ、おとぎ話の中のあのおどろおどろしい恐怖感が、これまた幻惑的な3D映像で再現されている。真面目な話、このカメラワークとモンタージュの様式美については、昨今映画を見ていて、しばし忘れていた映画の美学を感じる。

改めて、この映画の目的は、当時のアニメーションを3D化すること、そこに意義があったのではないかと思う。本作を制作した人は谷島正之プロデューサーである。谷島Pはアジア映画界における3D映画の第一人者である。どういう3Dが面白いのか、とことん熟知した人が手がけている作品なので、そんじょそこらの3D映画とは違い、これぞ3D映画と言わんばかりの奥行き感を作り上げている。

人形によるミニチュアの世界が、こんなにも3Dの媒体として生き生きとしたものになろうとは。小さなミニチュア世界をカメラレンズの特性で大きく映し出すことで立体感は通常のそれの数倍もふくれあがる。背景は止まったように静かで、ゆっくりとパンして行く。このゆっくりさが、3Dの奥行きを最大限に引き出している。

というわけで、この映画、3Dで見ない手は無いよ。(文・写真 澤田英繁)

2014年12月1日 22時54分

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