さらにパワーアップしたイエス来日公演2014年レポート
11月24日（月）に東京ドームシティホールで行われた英ロック・バンド「イエス」の2014年ワールドツアー来日公演に行って来た。素晴らしい完成度。イエスは僕は個人的にロック史上最強の「ライブバンド」だと思っているのだが、今回のライブを見て、その考えはより一層増した。爆音でドンッと打撃をかけてくるクリス・スクワイアのゴリゴリベースとスティーヴ・ハウの超絶テクニカルなギターのハーモニーのすごいこと。かっちょよすぎる！ いやー、レベルが違いましたよこれは。久しぶりにライブで鳥肌が立ち、聴き入った。
『危機』の完全再現には本当にゾクゾクっと来た。間奏の静かなシーンのところでは、ギターとベースであの水のせせらぎや差し込んでくる陽光のような光景を、音を再現していた。あれだけ壮大なスケールの曲を、そこにいる5人のメンバーだけで奏でていることに改めて感動。ここでギターが鳴り、ここでベースが鳴る、当たり前のことをここまで意識的に聴かせてくれるライブバンドは希有で、すっかり白髪になったメンバーたちのパワーに圧倒された。隣に座ってた姉ちゃんなんか感動で泣いてたぞ。
今回のライブは事前に名盤『こわれもの』と『危機』を再現したライブになるということだった。正直、僕は『こわれもの』よりも『サード・アルバム』や『究極』の方が好きなので、『こわれもの』よりももっと聴きたい曲があったのだが、聴いてみると、ミュージシャンひとりひとりの特色を活かしたソロをフィーチャーしていて、「Cans And Brahms」や「Mood For A Day」など、普段はライブアルバムであまり聴かれない曲もあえてライブで聴くと、こんなにもユニークな曲だったのかと、意外な発見があって面白かった。「We Have Heaven」もライブだとやたらとかっこいいし、「Five Per Cent For Nothing」については40秒足らずと、イエスの曲でも一番短い曲だが、こんなにも難しい曲だったとは。今聴くと、その演奏の超絶ぶりに改めて驚かされた。
あらたにジョン・デイヴィソンをボーカルに迎えて、新作『ヘヴン＆アース』を発表したばかりだが、この『ヘヴン＆アース』の完成度もかなり高かった。ジョン・アンダーソンが脱退し、パワーダウンするのかと思えば、その逆で、むしろパワーを増した。ジョン・デイヴィソンも物まねではなく、しっかりと新曲を作曲するソングライターとして現代のイエスをかなり元気づけている。公演では「Believe Again」と「The Game」を演奏してくれたが、そのクオリティは『こわれもの』の楽曲に勝るとも劣らない素晴らしいものであった。
キーボードのジェフ・ダウンズもまだ前回来日したときは、サポーター的な立ち位置に思えたが、今回のジェフはあれからイエスぽさを倍増して、演奏中もしっかり自己主張して、リック・ウェイクマンに劣らぬヘヴィなサウンドを爆音で聴かせてくれた。
セットリストは非常にわかりやすかった。『危機』を再現したあと、新作『ヘヴン＆アース』から2曲。その後『こわれもの』をやって終了。アンコールでは、ライブ定番曲の「I’ve Seen All Good People」と「Starship Trooper」の2連発。そうそう、この2曲が聴きたかったんだよねぇ。まさに、待ってましたと言いたくなる完璧な組み合わせ。アンコールは全員総立ちで踊りまくり。盛り上がったなぁ。
正直「Owner of a Lonely Heart」や「Awaken」も聴きたかったが、それ以上に面白い演奏を見せてもらえた。そりゃあ若い頃と比べれば演奏の質は落ちているけれども、それ以上に円熟したグルーヴを感じさせた。イエスの中心人物であるクリス・スクワイアのベースをフィーチャーして終わるところもファンとしてはほっこりさせられるし、非常に満足度の高いライブだった。
3万円の別途ミーティングチケットもあるし、来日公演のライブの音源がその場で売られていて（ライブのあと即買いしたけど）、この辺はお金儲けの為にライブをやると公言しているイエスらしいところで、そういうところがまたますます好きになった。公演の後のまわりの声を聞いてみても、「良かった」という声しか聞こえなかったし、よくある批判的な意見はほとんどなかった。
今回の来日公演は3日間ソールドアウトで、NHKホールにて追加公演もセッティングされたほど。日本でのイエス人気は健在であることを示した結果となった。また近いうちに日本で演奏してくれるに違いない。そして僕はまた絶対に見に行くつもりだ。（ヒデマン）
イエス 2014年ラインナップ
―クリス・スクワイア（ベース）
―スティーヴ・ハウ（ギター）
―アラン・ホワイト（ドラム）
―ジェフ・ダウンズ（キーボード）
―ジョン・デイヴィソン（ボーカル）
画像はウドー音楽事務所のサイトより
