ファン・ドンヒョク監督が『怪しい彼女』を撮ったワケ
『怪しい彼女』のファン・ドンヒョク監督が、6月4日(水)、恵比寿のバンタンデザイン研究所にて特別講義を行い、学生たちからの質問に答えた。
ファン・ドンヒョクといえば『トガニ 幼き瞳の告発』で知られているが、今回の作品はそれから180度方向性を変えて、70歳のおばあちゃんが突然20歳に若返るファンタジーを作った。本作は韓国内で大ヒットを飛ばした。ファン監督がなぜこの監督を引き受けようと思ったのか、ファン監督は次のように語った。
「病院での息子と母が会話するシーンが気に入ったので、やりたいと思いました。あのシーンで母や祖母への感謝と慰めの気持ちを学びました。どこの国だろうが、どんな人にも親がいて、愛情と献身を持って子供を育てています。私は父を早くに無くしているので、女手ひとつで育てて来た母の苦労を知っています。この映画で個人的に母親へ感謝の気持ちが伝えられると思いました」
また、オ・ドゥリ役のシム・ウンギョンについては、「70歳のおばあちゃんが20歳になったとき、ロングヘアの8頭身のありふれた美女ではなく、溌剌として、ちょっと猟奇的で、不思議な感じの人がいいと思い、ウンギョンをイメージしながらシナリオを書き直しました。『サニー』に出ていましたし、この役を演じられるのはウンギョンしかいないと思ったのです。正直、ウンギョンがやってくれることに反対する人もいました。韓国では女性が一人で主役をやるのは成功しないことが多くて、知名度が低いウンギョンにやらせるべきではないと思われていたのです。私はなんとか説得しまして、ウンギョンにやってもらうことにしました。みんな素晴らしいと言ってくれましたよ」とコメントしていた。
この講義には松崎まことと松江哲明監督も出席し、ファン監督と対談も行われたが、松江監督はファン監督について「時間の描き方がうまい」と絶賛。これに対しファン監督は、時間を使ったファンタジーとして、『恋はデジャ・ブ』と『ビッグ』を参考にしたことを明かしていた。
本作は音楽の評価が高く、歌が泣けると評判である。これについてファン監督は「私はこのシーンは泣かせようと思って作ったわけではないのですが、ため息をつくような感じで歌ってもらって、結果的に感動して泣けるシーンになりました」とコメント。日本映画にもかなり影響を受けていて、当時韓国では日本映画は禁止されていたが、解禁されるや、日本映画をたくさんみて、特に岩井俊二監督の『Love Letter』は汚いビデオテープの映像ながらも5回も見たという。「今度は日本で日本の綺麗な女優さんと一緒に映画を作りたいです」と茶目っ気たっぷりに語ってくれた。
「学生時代から映画監督を目指していたのか」という質問については否定し、「私が学生のときは学生運動が盛んで、私もそれに参加していたので、デモか酒のどちらかで、映画を撮りたいという思いはまったくありませんでした。大学4年生になってぼんやりと映画を撮ってもいいかなと思ったくらいです。恋人もできなかったので、もし私も20歳に若返れるのなら、合コンをしたいですね」と笑顔で語っていた。
『怪しい彼女』は、7月11日(金)TOHOシネマズみゆき座ほか全国順次ロードショー。