『キリク 男と女』ミッシェル・オスロ監督と高畑勲監督が対談
3月20日(木)にグランドオープンしたTOHOシネマズ日本橋で、20日から23日まで東京アニメアワードフェスティバル 2014(TAAF2014)が行われ、『キリク 男と女 3D』が映画祭のオープニング招待作品として上映された。イベントでは、来日したミッシェル・オスロ監督と、『かぐや姫の物語』の高畑勲監督による1時間のスペシャル対談が実現した。
フランスのアニメーション映画『キリク 男と女』は、オスロ監督の長編デビュー作『キリクと魔女』から続くシリーズ最新作。
公開当初『キリクと魔女』は、アフリカを舞台にしていて売れないと思われたことと、登場人物が裸だということから、メジャーな配給会社がどこもつかなかったが、ようやくアフリカ系の配給会社がついて、60本プリントして公開を開始。その後口コミで広がり、歴史的大ヒットを飛ばした。日本ではスタジオジブリが日本語版を製作。その翻訳と演出を高畑勲監督が担当して日本に紹介した。
対談では、オスロ監督が「最初は続編など作る物じゃないと自分でも言っていたのに、気がつけば3本作っていました」と笑顔でコメントすると、高畑監督が「『キリク』をシリーズものとして育てているのは良いが、僕は新しい作品を作った方がいいと思う」と笑顔で返すなど、仲の良い様子が伝わってきた。
二人はイベント直前にお互いに新作を見せ合ったというが、オスロ監督は『かぐや姫の物語』について、「美しい世界。私も日本で一番好きなのは平安時代ですから。あれほど美しかった時代は他にないです。植物の描写にも驚きました。アニメとして素晴らしい。ですが、ムッシュー高畑の映画では日本的という意味では『火垂るの墓』の方が上だと思います。『かぐや姫』はおとぎ話です。おとぎ話はどこの国にもあるものですから。『火垂るの墓』は日本の歴史の特定の場所を描いています」とコメントしていた。
一方、高畑監督は「僕が日本のものばかりやるようになったのは、他の文明をよく知らないからです。言語と身振りも日本しかわからないから、日本人を使わざるを得ない。フランス語は聞き取れないけど、どういう感情で喋っているのかは言葉がわからなくても伝わるもの。昔のアメリカ映画はその辺はいい加減で、外国のシーンでも英語で喋っている。オスロさんの映画はちゃんとアフリカのフランス語(セネガル)で喋っているのがわかる。その辺はしっかり描いている」と評していた。
作品にはアラビア語を話す人物が登場するが、オスロ監督は、「アラビア語のセリフには字幕をつけない、翻訳しないことを条件にしました。大人の人たちに見せると、なぜ翻訳しないのかと指摘してくる人が必ずいます。子供はそれを自然に受け入れます。人生に字幕はついていないですから。日本語版でもここはちゃんとやってもらっています。ムッシュー高畑のお陰です。フランス語版よりも日本語版の方が優れていると思います」とコメントしていた。
対談は予定時刻を10分以上オーバーしていたが、最後に司会者が機転を利かせて高畑監督に「新作の予定は?」と切り出し、場内の笑いを誘っていたが、高畑監督は「今のところない」と笑って返していた。