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    先日、幸運なことに、俳優の三元雅芸(みもとまさのり)さん(36)に2時間のロングインタビューをすることができた。三元さんは映画でも活躍されている役者さんだが、ゲームなどでモーションキャプチャーの俳優としての顔も持つ。今回のインタビューの最大の目的は、映画俳優としてではなく「ゲーム俳優」としての三元さんに、ゲームの現場について語ってもらうことである。

    三元さんは、これまで数々のモーションキャプチャーの現場を体験してきた経歴を持つが、代表作はセガの人気ゲーム『龍が如く』シリーズである。三元さんは8年にも渡って『龍が如く』シリーズで、主人公・桐生一馬の動きを担当して来た。

    三元さんがボディーの演技を担当した代表的なゲーム

    • セガ『龍が如く2』主人公・桐生一馬役など
    • セガ『龍が如く 見参!』主人公・宮本武蔵役、佐々木小次郎役など
    • セガ『龍が如く3』主人公・桐生一馬役など
    • セガ『龍が如く4 伝説を継ぐもの』主人公・桐生一馬役、秋山駿役など
    • セガ『龍が如く OF THE END』主人公・桐生一馬役、秋山駿役など
    • セガ『龍が如く5 夢、叶えし者』主人公・桐生一馬役、秋山駿役、品田辰雄役など
    • セガ『龍が如く 維新!』主人公・坂本龍馬役
    • KONAMI『メタルギア ライジング リベンジェンス』サムエル・ホドリゲス役
    • カプコン『ストリートファイターIV』主人公・リュウ役、ダルシム役
    • カプコン『戦国BASARA』シリーズ 主人公・伊達政宗役、真田幸村役
    • カプコン『モンスターハンター』シリーズ 主人公・ハンター役
    • バンダイナムコゲームス『鉄拳6』三島一八役
    • コーエーテクモゲームス『真・三國無双4』曹丕役
    • 元気『風雲 新撰組』沖田総司役

    では、ゲームの現場とは、モーションキャプチャーの仕事とは、いったいどういったものなのか。『龍が如く』シリーズの現場を中心にして話をきいていきたいと思う。

    モーションキャプチャーの世界へ

    まずは、どのようにしてこの世界に入ったかである。大阪出身の三元さんは、先輩に誘われて、作品名も知らずにある作品のオーディションに行った。それが『デビルメイクライ』(カプコン)の現場だった。最初はアクション補助として入ったが、そこで三元さんはモーションキャプチャーの現場を初めて目の当たりにし、興味を持ったのである。

    活動拠点を大阪から東京に移し、東京で最初に参加したモーションキャプチャーの現場は『SDガンダムフォース』というアニメだった。ここでアクション監督の谷垣健治さんから映像のアクションについて学ぶ機会を得る。アクション系の役者が関わる現場が多かったこともあり、そのコネクションから、三元さんはアクションゲームに携わる機会が次第に増えて行った。

    桐生一馬役を演じることになったワケ

    『龍が如く』シリーズで、三元さんが桐生一馬役を演じるのは2作目からだが、実は別の形で1作目から現場に参加していたという。1作目はモーションキャプチャーの俳優としてではなく、声優としての参加だった。三元さんは街のゴロツキやホームレスの声の役を演じていたが、ここで1歳年上の横山昌義プロデューサーと出会ったのである。横山プロデューサーは『龍が如く』シリーズでずっと脚本・演出を手掛けてきた現場の中心人物だった。

    『男たちの挽歌』のような世界設定のある『龍が如く』シリーズ1作目のムービーで主人公の桐生一馬がとあるシーンでファンタジックな動きをしているのを見て、「超人である桐生だからこそ、もっと人間臭い要素を僕だったら入れたい」と横山プロデューサーに、身振り手振りで直接話したという。おそらく横山プロデューサーは、そうした三元さんの作品に対する積極性と、その人間性に惚れ込んだのだろう。この出会いから、2作目以降、三元さんは桐生一馬役を任されることになったのである。

    「桐生というキャラクターは『1』で認知されているから、『1』のお客さんを裏切りたくなかったんです。良い意味では裏切りたかったのですが、"あれ、まったく違う"とは思われたくなかった。なので、『1』のムービーを全部見て、桐生の癖を真似るようにしました。でも『1』の桐生とはまた違うリアリティを持たせないとダメだと僕は思ったので、怖いなら怖い、不安だったら不安だっていうのを見せられるときに見せようと思ったんですね。桐生に関していうと、ほぼ無敵の状態じゃないですか。でも彼が怒るのって自分に降り掛かってきているものじゃないんです。自分の仲間が傷つけられたときに怒る。そこに桐生の動揺を見せようと僕はしているんです」

    実際にセリフも喋っている

    モーションキャプチャーというと、動きだけのイメージを持たれるかもしれない。しかし、実際は俳優がセリフも声を出してちゃんと喋っている。彼らの声が本編に使われることはないが、声に出さなければリアルな演技はできない。だからモーションキャプチャーの俳優も、膨大な量のセリフをしっかり覚えて演技に臨んでいるのである。

    三元さんの場合、『4』では主人公が増えて桐生に加えて秋山役も演じている。『5』ではさらに主人公が増えて品田役も演じているから、その分覚えるセリフの量が増える。ほぼ休みなしである。

    カメラはないが、どこから撮られているのかを考える

    映画やテレビの現場にはカメラがある。当然、映画では演じている人が、今カメラがどこの位置にあるのかわかっている。実写映画との大きな違いは、モーションキャプチャーにはカメラがないことである。一見、舞台の芝居に近いようにも思えるが、モーションキャプチャーの映像にはカメラワークの概念が存在する。カメラがないということは、言い換えれば、どの角度からも映像が作れることを意味する。モーションキャプチャーの俳優は、今どこからどういう風に撮られているのかを、自分で考えながら演技しなければならない。これは大変なことなのだと三元さんはいう。

    『龍が如く』の現場の特徴は、ひとつのシーンがあれば、一気にワンカットで演技させることだという。つまりは映画でいうところの長回しのようなものである。完成した映像には編集が入るが、現場ではカットを入れずに一気に演技をしてデータを取るのである。

    「ムービーで5分から10分くらいあったりするんですけど、あれは役者が動いてるんですよね。映画やテレビで5分10分の長回しってなかなかできないんです。役者がそこで詰まったり、照明であったり、全部干渉しないようにするためにはカットを割った方が早いですから。映画だと、"セリフを言う前に2秒ください、のりしろが欲しいので"ってできるんですけど、モーションキャプチャーってほぼ舞台みたいな感じなんですね。相手の芝居を受けながらちゃんとやらないといけないですけど、絵コンテがあって、ここで、ひき、よりとあって、モーションキャプチャーってどの角度にも入っていけるんですよ。それを考えてないといけないですね。『維新』で、龍馬と武市が会話しているところがあるじゃないですか。あれはもうひとりの役者と10分延々やってるんですよ。もちろんお互い役者同士ですからセリフは入ってるんですけど。カット割りはできるんですけど、良い意味でカットしたくないんですね。最初から最後まで一連で行くのが面白いんです」

    これは『龍が如く』の現場だけの特徴だという。映画の場合、編集点を考えながら相手のセリフを受けてナチュラルに返すようにしなければいけないが、モーションキャプチャーの場合、舞台のような感覚で対話することができる。10分くらいの長い芝居ができることは、役者にとってこの現場の大きな魅力でもあり、最も大変なところでもあると三元さんはいう。

    『龍が如く 維新!』
    『龍が如く 維新!』ゲーム画面より。ひとつのシーンでも見えないカメラは様々な角度から登場人物を捉えている。 (C)SEGA

    顔に表情をつける

    現場での三元雅芸さん

    『龍が如く 維新!』で武市半平太役の声を演じているのは人気俳優の高橋克典さんである。顔も高橋さんの顔になっているが、高橋さん自身の顔の動きをキャプチャーしているわけではない。実は三元さんが後から顔の表情をつけているのである。キャラクターのモデルこそは高橋さんだが、唇の動きだったり表情だったりをつけるのは三元さんの役目だ。現場では顔にたくさんのマーカーがつけられる。データとして取られるのはマーカーの位置だけである。データさえ取れば、後でどのような顔型にも差し替えることができる。

    つまり、1人のキャラクターの演技者は、ボディー役、フェイス役、ボイス役の3パートに分かれていることになる。順番としては、最初に台本があり、絵コンテがあり、それをもとにボディー役の俳優が体の動きをつける。その後、フェイス役の俳優(主に三元さんの役目)がボディー役の演技にあわせて顔に表情をつけてデータを取る。それとほぼ同時進行で、ボイス役の声優に声を入れてもらうわけだが、ボイス役の声優は映像を見ながら演技しているわけではなく、演出家の指示のもとで演技しているのである。

    『龍が如く』シリーズでは、桐生一馬、秋山駿、冴島大河、真島吾朗、品田辰雄など、ほとんどのキャラクターの顔を三元さんが演じている。当然ながら役ごとに芝居も変えて、感情を込めてセリフを喋っているのだから、いかに三元さんがこの現場で多忙を極めていたのかがわかるだろう。

    「嬉しいなと思うと、口がちょっと動きますよね。でもこれだけの動きだとデータとして取れなかったりするんですよ。だから、口角をもっとあげた方がデータとして使いやすかったりするんですよ。ナチュラルにやりたい僕としては、そこに自分の中で葛藤があります。ちなみに『維新』では沖田も永倉もフェイスは僕です。『5』なんて遥以外の主人公は全員僕ですよ(笑)」

    「モーションキャプチャーは動きをつけるものではない」

    三元雅芸

    モーションキャプチャー。文字通りの意味なら、データとして動きを取り込むことである。しかし、ただ動きをつけることなら誰にでもできる。三元さんは、動きをつけることよりも、感情を込めて演技することが大切だと考えている。

    「ゲームって人を倒したり、何かを壊して宝箱を開けたり、そういうことって往々にしてあるんですけど、そういうことを形でやることはないんですよ。するのは良くないと思いますし、僕はしたくない。形でやるとしたらCGでいくらでも作れるはずなんですよ。ファミコンだったら、見た、開けた、500ポイント手に入れたとあるでしょうけど、そのときにいちいちそれを動きでされたらすごく間延びしちゃうんですよ。これを圧縮することも考えたりするんですよ。取った、でもどっかに物を入れたりしてないんですよ。どっかに入れるのを見たいとも思わないし、どこに入れたのかツッコミの要素も省き、お客さんをシンプルに誘導していくところは役者として厳しいところがあります。でも感情をなくしてはダメなんですよね。動いただけで普通に取れるモーションキャプチャーではなくて、芝居として"エモーションキャプチャー"で行きたいなと思いますね」

    動きを再現する三元雅芸

    「動きだけというのはしたくないんですね。感情があれば、それは体に反映すると思いますし。表情は写りませんけど、僕は実写と違うこととして捉えたくないと思ってるんです。モーションキャプチャーというよりも"エモーションキャプチャー"であるということ。僕にしたら単純に当たり前のことだと思うんです。例えば、苦しいという表情、毒薬を飲んだら、僕の表情が見えなくても、こうやって首に手をあてると簡単に表現できるでしょ。こんな簡単なことはしたくないんですよ。動かないと表現できないというのは嫌なんです」

    「今、僕気づかずに首が斜めに動いたんですけど、"そうか"と言ったときに自然と首が斜めに動いた、僕はこれを活かしたいんですよ。ただうなずくだけでは、これは記号でしかない。感情の起伏、怒るときとか、胸をうずめてた方がかっこいい。遥と喋るときは、多分僕は"ああ、そうだな"って言う前に何度もあごを動かしていると思うんですよ。"ああ"っていう前に遥を安心させてあげたいんですよ。この桐生が遥のために戦うとか、タクシードライバーをしているとか、背景を持って来て演じないと。だから動きだけというのは絶対嫌なんですよね。でないとゲームをやっている人としても面白くないと思うんですよね」

    『龍が如く 維新!』のムービーにかけた情熱

    プレイステーション3ソフト『龍が如く 維新!』

    『龍が如く』シリーズの中でも、三元さんは最新作の『龍が如く 維新!』に特別な思いがあるという。これまでほぼすべての主人公を三元さんが一人でやってきたが、『維新』では初めてすべての役をその役割の俳優がおのおの自ら演じているのである。

    「『維新』のオープニングで、斬り込みがあるじゃないですか。土方、沖田、永倉、あれはPOV(一人称目線)ですよね。龍馬の目線で行ってるじゃないですか。3対20くらいですかね。あれってモーションの裏の話をすれば、人数足りませんから、1対5というのを3回くらいやってますから。土方パート、沖田パート、永倉パートって新選組も入れ替わりやってるんですよ。僕が全部立ち回りをつけてるんですけど、楽しいんですよ。この3人ってスタントマンでも何でもなく、役者なんですよ」

    『龍が如く 見参!』では木刀を持って演じるわけだが、アクションをやったことのある役者が他にいなかったから三元さんがほぼすべてのアクションを演じた。他の人がやってテイクを重ねた、または怪我の恐れがあると考えたときは、三元さんが代わりに演じていたという。宮本武蔵と佐々木小次郎が決闘するシーンでは、いわば自分同士の戦い。刀をはじくところをカンカンカンとリズムで覚えながら演じたという。

    「『維新』では誰も役者がおのおの吹き替えを望まなかったんです。土方役をやっていた役者が"大丈夫です。俺やります"って言ってくれて、"じゃあやりましょう"ってなって、みんなやってくれて。誇らしかったな。俺は俺でやったっていうね。僕は座長でもあったので、それを見て僕もすごく嬉しかった。すごいガッツがある役者が集まったのが今回の『維新』だったんです。チームとしてやっていく心強さを『維新』で改めて感じました。今回は吹き替えを使わずにみんながみんなの役をちゃんと自分でやったというところがあるんで、ゲームをやりながら僕ずっとお父ちゃんみたいに泣いてます。みんなでテイク重ねたけど、これオッケーになってるじゃん(拍手)みたいなね」

    三元さんから話をきいているうち、ゲーム製作の裏側の見えてこない部分が見えてきた。ゲームをやっていても普段はまったく意識しなかったことだが、その裏ではスタッフや俳優たちがこんなにも弛まぬ努力をしていたのである。桐生一馬という愛すべきキャラクターと、『龍が如く』シリーズのあの熱い感動は、三元さんとその一座の働きがあったからこそ成し得ることができたものだったこと。次回はぜひそこを念頭に置いてゲームをプレイしていただきたい。

    取材・澤田英繁

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    5年前 2014/3/24 0:00:00
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