佐伯日菜子も絶賛 学生映画の『神奈川芸術大学映像学科研究室』が劇場公開
2月5日(水)、新宿武蔵野館にて、『神奈川芸術大学映像学科研究室』の坂下雄一郎監督が、女優の佐伯日菜子さんとトークイベントを行った。
『神奈川芸術大学映像学科研究室』は、架空の大学を舞台に「組織の理不尽」を描いた作品。低予算の制作ながらも緻密なストーリー展開で事態が次第に悪い方に転がって行く様子がユーモラスに描かれる。大学院の修了制作作品という学生映画でありながら、SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2013で審査員特別賞を受賞し、「SKIPシティDシネマプロジェクト」(若手映像クリエイターの作品の劇場上映支援プロジェクト)に選定され、一般劇場公開が実現した。黒沢清監督、長谷川和彦監督など、映画業界の巨人たちも本作に賞賛のコメントを寄せている。
本作は、1月25日(土)の封切りから、新宿武蔵野館で2週間限定でレイトショーされ、14回の上映すべてに坂下監督が出席し、黒沢清監督らそうそうたる著名人たちと連日トークイベントを開催した。その中で、紅一点の女優ゲストとして登壇したのが、佐伯日菜子さんである。
佐伯さんは「奥田さん(主人公)がすごく良い顔をしている。最後の笑みはなかなかできるものではない。セリフを言わされている感じがしない。口癖とかキャラクターとかをそのまま映画にしているのかなというくらい自然でびっくりだった」と主演の飯田芳らキャストの演技を絶賛。脚本を書いているときにはまだ誰が出るのかも決まっていなかったというが、坂下監督は「知り合いの知り合いという感じで推薦してもらって、運が良かった。巡り合わせが良かったのかなと思ってる」とコメント。役者への演出については「そこで間をとってとか、言い方とかは、ある程度ちょっと修正するくらいで、あまり言わない」とのことだが、脚本に「えっ」という感動詞も書いてセリフとしてしっかり言わせたという。演技の間を編集で操作したこともあるという。
本作は、大学の映像学科研究室で助手をしていたことがある坂下監督が、その実体験をもとに自ら脚本を書いて映画化したものだが、映画の中に登場する学科長のモデルは大森一樹監督だという。映画の中では怖い学科長役だが、実際の大森監督については、「優しい人。関西なので、普段物言いがきつく感じる。それを標準語にするとさらにきつめになる」とコメントしていた。なお、大森監督は本作のパンフレットに本作の感想を寄せていて、「私が映画教育に関わって10年間で一番だ」とその出来映えを手放しで絶賛している。
佐伯さんは、この映画を見て、「学生なんてゾンビ映画ばかり撮ってる」というセリフが一番気に入った様子である。坂下監督は「やはり学生の映画はゾンビの映画が多い。血が出たり、映画を作っている感じがするのが楽しいのだと思う」と分析していたが、佐伯さんは「私もホラーぽい作品に出ることが多かったから血のりを使うと、本当に悲しい気持ちになって痛くなる」とコメントして場内の笑いを誘っていた。
坂下監督は、大学院の修了制作で本作を作ったことについて、「自分がこういう映画が好きだからこういうのを作ろうじゃなくて、自分のエゴは捨てて、なるべくまわりの方に受けがいいようなものを狙って作った」と振り返ったが、それを聞いた佐伯さんは「クール! 卒業というと、最後だから自分の好きなものを残したいという人が多いのに、見る側を考えてるというのがすごいなあ」とそのプロ意識に感服していた。
佐伯さんが無邪気に坂下監督に「好きな映画は何か」と訊くと、坂下監督は、即答で『トイ・ストーリー3』、『となりのトトロ』、『殺人の追憶』の3本をあげた。「1本くらい実写を入れとかないと」と坂下監督。しかし、『殺人の追憶』のような映画を作りたかったわけではなく、「『スーパーの女』、『ハッピーフライト』のように、あまり知られていない内幕ものを作りたかった」とコメントしていた。
佐伯さんが「私は女性の安藤さん目線で見ちゃう。私がこの役をやるなら、奥田さんにラブ的な要素を入れたいかも。どうかな?」と女優らしい質問をしていたが、坂下監督は「僕は私生活はなるべく出さない方が良いと思っていた。大学内だけで、仕事上の会話だけで完結したかったから、なるべく主人公の家とかは絶対に映さないと決めていた。実際モデルになった女性がいて、僕はその人と実際プライベートな話はしなかった」と終始クールに答えていた。(レポート・澤田英繁)
『神奈川芸術大学映像学科研究室』今後の公開情報
●愛知 名古屋シネマテーク 2月22日(土)~
●大阪 シネ・ヌーヴォ 3月1日(土)~
●神奈川 横浜シネマ・ジャック&ベティ 3月22日(土)~
●京都 京都みなみ会館 近日公開予定