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『ゼロ・グラビティ』無重力空間を表現した長回し映像は圧巻

宇宙空間に投げ出された一人の女性宇宙飛行士を描く『ゼロ・グラビティ』が公開中だ。一般受けも批評家受けも非常に良く、早くも今年度公開された3D映画のナンバー1との呼び声が高い。来年のアカデミー賞でも作品賞が最有力視されている作品だ。

この映画を紹介するとき「サスペンス映画」とは書かれてあっても、「SF映画」という言葉は使われていない。それだけこの映画がリアルに宇宙空間、無重力の世界を表現しているからである。舞台こそ宇宙だが、これはサイエンスのフィクションではないということである。その点については映画史に残るエポックメーキングな作品になったと断言してもいい。

しかし、筆者はあえて「SF映画」という言葉を使いたい。アカデミー賞では過去SF映画が作品賞を取ったことがないため、今度こそSF映画が取るときが来るかもしれないから、その願いを込めたいからだ。この映画は本当に素晴らしかった。その映像の迫力に圧倒されて筆者は涙が溢れ出た。

無重力空間の描写、遥か遠くに横たわる地球の美しさ、何もない漆黒の闇に浮かぶ宇宙飛行士の映像など、3Dの映像の力に圧倒される作品だ。そこには音もない。宇宙には音を伝える空気がないから、何も聞こえないのである。この映画では、音のない宇宙がリアルに再現されてある。

特筆すべきは延々と続く長回しの映像だ。ワンカットのまま長時間カメラが回り続けている。それが、まるで本当に宇宙に来ているかのように錯覚させる。上も下もない視界を、右に左に浮遊するカメラワークはライド感も満載だ。長回しだからこそ、3Dの映像が生きてくる。



去る12月4日には、主演のサンドラ・ブロックが来日して記者会見に出席した。『ハリー・ポッター』シリーズの全作を手がけたデヴィッド・ヘイマン・プロデューサーと、監督のアルフォンソ・キュアロンも一緒に出席した。

サンドラ・ブロックは『イルマーレ』以来7年ぶりの来日だという。『ゼロ・グラビティ』のキャンペーンとしては日本が最後の国とのことだ。

サンドラは筆者が想像していた通りの人だった。赤いドレスで登場したサンドラは、「フライトで寝てないのよ。寝不足の顔を見られたくないから、ドレスの方に目が行くように、今日は赤いドレスを着てきたの」と挨拶。こんな感じで終始冗談を言っていた。

この映画では、ほぼサンドラの一人芝居だけで見せているが、2度目のアカデミー賞主演女優賞も期待されているところである。それついてはサンドラも「多分無理ね」と否定的だったが、「私はこの映画が本当に心から好きで、この映画に出られるチャンスを得られたこと自体が、私にとっては賞を得られたようなものだったわ。一生に一度の素晴らしい体験だったわ」とコメントしていた。

共演したジョージ・クルーニーについては「最悪よ」と一蹴して記者たちを笑わせたが、「本当のジョージは、みんなが知ってるジョージとは全然違うわ。彼はいつも遅刻をするし、とても意地悪なの。こんなことをメディアの前で言うと、後でジョージから"何を言ってるんだ"と電話がかかってくるわね。彼は毎日常に演技をしているか、監督をしているか、プロデュースをしているか、いつ休んでいるのかわからなくて、とても熱心な人よ。いつも共演者のことを助けようとしてくれるし、何でもしてくれる。自分のシーンがカットされることになっても、それが映画のためになるのなら良いと思っている。あまりこんなことを言いたくはないけど、とても魅力的な人よ」と付け加えていた。

『ゼロ・グラビティ』は現在公開中。(澤田英繁)

2013年12月16日 02時51分

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