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土屋貴子初主演『潜伏』 オウム真理教・菊地直子の逃亡生活に着想

12月2日(日)、映画『潜伏』の舞台挨拶が行われ、主演の土屋貴子と、共演のなだぎ武、東野克、監督の保坂延彦が登壇した。

『潜伏』は、新興宗教の教団に洗脳され、指名手配中の女性の17年間の潜伏生活を描いた愛情物語。プロデューサーの新田博邦は「あくまで劇映画を作ったつもり」と話しており、映画では珍しく作中には「この映画はフィクションです。実在の人物とは一切関係がありません」と注意書きが表示されるが、このストーリーはオウム真理教元信者の菊地直子を連想せずにはいられない内容である。

菊地直子が逮捕されたとき、指名手配の写真とはまったく違う顔になっていたことに日本中が驚いたものである。何かそこには17年という長い逃亡生活の中で、人間ドラマがあったことを想像させたものだが、『潜伏』では、菊地直子の逃亡生活をドラマティックに膨らまして、究極の愛情物語が生まれている。潜伏する女(土屋)とかくまう男(なだぎ)のピュアな愛の物語は一粒の涙を誘う。

土屋は役者経験こそ長いが、これが映画初主演である。しかし、初主演とは思えないほど存在感が際立っている。土屋は、地味な役ながらも40代の大人の女性の色気を感じさせる。ただ「はい」と返事するだけでも、その声に何か不思議な魅力を感じずにはいられない。なだぎが土屋に「可愛いよ」というシーンなども、しぐさといい表情といい本当に可愛いと思える瞬間があって、見ていて惹かれるものがある。なだぎは、お笑い芸人であることを忘れるほど静かでシリアスな演技をしている。本作の最大の見どころは2人の演技と、2人の紡ぎ出すその初々しいラブ・ストーリーにある。

あるスポーツ紙は、土屋を「体を張った無名女優」と評した。これについては土屋も「呼び名がついて良かった」とまんざらでもなかったようで、この日も楽屋でなだぎにも声に出して読んでもらったという。新田プロデューサーは無名という言葉に対して「メディアでは有名か無名かのどちらかしかないんだから、無名と書かれても、これは良いことである。これからもっともっと土屋さんには有名になってもらいたい」と話していた。なだぎも「僕も初めてラブシーンをやらせてもらった女優なので、初体験の人は忘れませんから、土屋貴子という女優は僕の中でずっと忘れることはないです」とコメントしていた。

というのも、実は、この映画で土屋となだぎは濡れ場に挑戦していて、なだぎは「僕はお笑いのフィールドにいるので、なかなか演技の機会はなかったから、ラブシーンも初めてで、土屋さんがベテランと聞いていたので、色々教えてもらおうかと思ったら、土屋さんも初めてだと言って、年齢でいえばおじさんとおばさんが初めて同士でやって緊張しました。でもそこが初々しくて役の設定に合ってたかなと思います」とコメントしていた。

しかし、現場で監督とプロデューサーに強く「乳首なめた方がいいんじゃない?」と要求されても、なだぎは断ったそうで、「いきなりなめてと言われてもなめられない。どんだけ現場で乳首って言葉が出たか」となだぎが言うと、「頑なに断られまして、私は複雑な気分でした」と土屋。なだぎは「あまりにみんなが乳首っていうから、僕も意地を張っちゃって。本当は僕に勇気があればいけたんですけど、勇気がなかったので」と申し訳なさそうに話していた。

保坂監督は、「今回の作品では役者の芝居を見たいから、今回はアップにこだわった。普段はアップはあまりしないんですけど」と語り、新田プロデューサーに、監督をやる条件として、プールの中に潜るシーンを撮る条件を出したことなど、自分だけのこだわりを語っていた。監督はこれが8年ぶりの作品ということで「私も8年潜伏してたもので」と冗談ぽくいうと、なだぎは「すごいですね。スタンリー・キューブリックみたいな撮り方しますね」と言って笑わせていた。

最後に土屋は、「1年前に撮った作品です。皆さんにやっと見ていただけることになりました。潜伏する女とそれをかくまう男の愛情の話になっております。どうぞ皆さん見てください」とコメントしていた。

『潜伏』は、オーディトリウム渋谷ほかにて全国順次公開中。(澤田英繁)

2013年12月2日 04時32分

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