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佐伯日菜子、19年前のデビュー作『毎日が夏休み』の思い出を語る

11月23日(土)、三鷹産業プラザにて、『毎日が夏休み』の上映会が行われ、監督の金子修介さんと、主演女優の佐伯日菜子さんが上映後のトークショーに登場した。

『毎日が夏休み』は、「第4回三鷹コミュニティシネマ映画祭」の中で上映された作品のひとつ。「まちづくり三鷹」が行っているイベントで、三鷹の活性化を目的として、三鷹の人たちが企画・運営に参加している。実行委員であり司会も務めたのは映画監督の鶴田法男さん。今回は三鷹発の映画監督ということで金子修介さんの映画を上映することになった。ゲストに弟の金子二郎さんも登場。どうせなら女性の方にも来てもらったがいいということで、主演女優の佐伯さんに声がかかって、この日のスペシャルトークイベントが実現した。

「35mmフィルムを上映する映画祭」というところにこのイベントの意義がある。なんと、この映画祭のためだけに35mmフィルム映写機を購入したのだという。『毎日が夏休み』は19年前の作品だが、フィルム上映による映像のその質感は何とも懐かしく、味わい深いものがあった。上映中カタカタとフィルムが流れる音が鳴り続け、フィルムの転換部分でガシャンと映写機が切り替わる音が聞こえる。フィルムに入った縦の傷やところどころに見えるゴミまでも懐かしく、フィルムということ自体がれっきとした映像の一スタイルになっている。まるで魔法の世界に来ているような心地好さと、今映画を見てるんだぞという確かな手応えがあった。改めてフィルムっていいなあと再確認させられる映画祭で、上映後のお客さんの反応もフィルムがすごく良かったと評判だった。

映画そのものの内容も素晴らしかった。佐野史郎さんも風吹ジュンさんも高橋ひとみさんもこれぞまさにハマリ役という感じ。『毎日が夏休み』は今で言うニートを描いた作品だが、金子監督は「普通の映画なら登校拒否しても、最後には学校に戻って終わる映画が普通だ。でもこの映画は学校には戻らない。そこがいい」とコメントしていた。

佐伯さんはこの映画で銀幕デビューを飾った。「佐伯日菜子(新人)」とクレジットされるところが初々しい。ナレーションも自分でやっていて、上目づかいの感じとか喋り方とか本当に可愛くって存在感がすごい。誰にでも新人の時代はあるが、佐伯さんの場合、第一作でこれだけすごい映画に出たことは幸運だったろう。佐伯さんもトークショーのとき、伊丹十三監督に「あんなに良い映画でデビューしたんだからこれからもがんばりなさい」と言われて女優業を続けて行く決心をしたことを振り返っていた。

トークショーでは、せっかくだからお酒を飲もうということになり、解禁したばかりのボジョレーヌーボーが登場し、佐伯さんは「ボジョりますか」と言って壇上で乾杯した。金子監督はジョークを言う佐伯さんを見て意外に思ったようで「あれ? そんな冗談とか言う人だったっけ?」とコメント。佐伯さんは「いいますよ。『毎日が夏休み』のときは、デビュー作だったので、あまりふざけちゃいけないかなと思って真面目にやりました」とコメント。すごく楽しくてはしゃいでいたら、撮影中「遊びに来てるんじゃないんだから」と金子監督に怒られて泣いた思い出話もしてくれた。

「好きなシーンは何か」という質問では、佐伯さんはビンゴ大会でもらった景品を突き返すシーンをあげていた。あのときから主人公スギナの成長が始まるからだという。加えて「自分で言うのもなんですが、お父さんと自転車に二人乗りしてるときの私の顔が好きです。とても幸せそうなので」とコメントしていたが、そう照れながら話しているときの佐伯さんの表情は映画の中のスギナの笑顔にとても似ていた。

途中、金子監督の息子の鈴幸君が登場するサプライズもあった。「じぇじぇじぇ」と驚く佐伯さん。実は『毎日が夏休み』で、たったワンカットだが佐伯さんが映画の中で抱っこしていた赤ん坊が鈴幸君だったのである。突然のゲストに佐伯さんも本当にびっくり。感動の再会である。あんなに小さかった赤ん坊が今では立派な大学生になって自主制作でゾンビ映画を作っているというのだから、佐伯さんも感慨深いものがあったようだ。「撮影のときは、金子監督の赤ちゃんだから、できるだけカメラにお顔が見えるように気を遣ったんですよ」と思い出話に花を咲かせていた。(澤田英繁)

2013年11月25日 04時24分

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