WOWOWの力作ドラマ『チキンレース』、11月10日に無料放送
10月31日(木)、渋谷の映画館で、『チキンレース』というテレビドラマを見てきた。このドラマは、WOWOWで11月10日に無料放送予定の100分間のドラマである。色々な意味で、WOWOWの本気が伝わってくる力作になっていた。この完成度の高さは、地上波と比較しても、さすがWOWOWは違うなとうならせるものがあった。
上映の後、若松節朗監督はじめ、出演者とスタッフが舞台挨拶を行った。寺尾聰と岡田将生のダブル主演で、ヒロイン役が有村架純。脚本の岡田惠和は『いま、会いにゆきます』や『おっぱいバレー』を書いた人。連続テレビ小説「おひさま」でも有名である。監督の若松節朗は日本アカデミー賞最優秀作品賞に輝いた『沈まぬ太陽』を撮った人である。一流のスタッフと一流のキャストが集まった。岡田惠和もはじめから主役に寺尾聰を想定してシナリオを書いたそうで、寺尾聰も実に生き生きと役を楽しみながら演じている感じがする。
ストーリーは、19歳で交通事故にあって長年昏睡状態が続いていたジジイ(寺尾)が、45年振りに目覚め、看護師のおっさん(岡田)と一緒に失われた青春を取り戻す旅に出るというもの。体は64歳だけど、心は19歳というジジイの性格がなかなか面白い。最低じゃねえかって思ったツンデレの看護婦(有村)も作品を見て行くうちにたまらなく可愛く見えてきてしまう不思議。出番は少ないが、松坂桃李、松坂慶子ら脇役キャラが登場したときのその存在感もキラリと光る。
心憎い演出に、納得のいく結末。これはもう映画館で上映してもいいレベル。舞台挨拶でも寺尾は「せっかく良い映画なのでもっと多くの人に見てもらいたいんですよ。なんとか映画館で上映できないですかね。どうですか、社長!?」とWOWOWの社長にその場で直談判する微笑ましい一幕もあった。
特筆すべきことは、このドラマは4Kの映像で撮影されたということである。4Kってなんぞやという人もいると思う。フルハイビジョン画質(2K)の4倍の解像度を持った映像が4K。これは全編デジタルカメラで撮影された『スター・ウォーズ/エピソード2』の4倍の高画質ということである。若松監督も「岡田君の綺麗な顔がより綺麗に見える。松坂さんには悪いことをした」と話しており、映像のシャープさには驚いている様子だった。
この日、4Kの映像で上映されたが、最前列で鑑賞してもまったく画像の粗さを感じさせなかった。一般家庭のテレビが1Kか2Kの性能なので、4Kの真価は一般家庭ではなかなか発揮できないが、しかし、WOWOWが新しい技術をあえて試みたことに意義があるわけで、そういうところにもWOWOWの漢の矜持を見るのである。(澤田英繁)
ドラマW『チキンレース』は、11月10日(日)夜9:00から「TOUCH! WOWOW 2013」内で無料放送。