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『そして父になる』ティーチ・インに福山雅治がサプライズで登場

10月28日(月)、新宿ピカデリーで行われた『そして父になる』の上映後ティーチ・インに、サプライズゲストとして、福山雅治(44)が登場し、観客を驚かせた。

6年間育てて来た子供が、取り違いだったことがわかったとき、父は6年間育てて来た息子を選ぶのか、それとも血のつながった息子を選ぶのか。自分がもし当事者だったとしたら何を思うか。そんな問題を提起する本作は、公開以来、話題が話題を呼び、シリアスドラマでありながら、この日の前日までに観客動員数は228万人を突破する大ヒットを飛ばしている。この大ヒットを受けて、是枝裕和監督(51)は、これまでに上映後に観客からの質問に直接答えるティーチ・インを積極的に行って来た。

この話を聞いた福山が、そんなことをやってるのか、面白そうだから、俺も参加したいと監督に声をかけたことから、こうしてサプライズでの登壇が決定した。福山雅治にとって、国内でのティーチ・インは初のこと、こういうサプライズの登場も初の試みである。


この日は、公開からだいぶ日数が経っていたにも関わらず、新宿ピカデリーの1番スクリーン(ビル内で最も大きなスクリーン)は観客で埋め尽くされ満席に。客層を見てみると、女子率が高く、なぜかみんなバッチリおめかしして来ているではないか。もしかしたら、彼女たちは福山雅治が出てくることを密かに期待してここに来ていたのかもしれない。

上映が終わって、いよいよゾロゾロと大勢のマスコミが入って来て、女子たちは「(監督だけの登壇にしては)マスコミの人多いよ」とざわざわ騒ぎ出した。

イベントが始まると、一人是枝監督だけがステージに登壇。椅子に腰掛けると、ぽつんと寂しい感じである。司会者は特にいなかったので、是枝監督が自分自身で進行役を務めていたのだが、是枝監督がやおら「ティーチ・インに参加したいと言ってた人がいたので、今日は二人でやります。スペシャルなサプライズのゲストが来ています」と話すと、この一言で女子たちが友達同士で見つめ合いながら「ほら、やっぱりくるんだよ」と手をジタバタさせながら喜んでいた。そして「福山雅治さんです」と是枝監督の紹介で福山雅治が登場。鳥肌が立つ女子たち。みんな大絶叫である。目の前に現れた福山雅治を見つめているうちに、女子たちの目は次第にキラキラと輝き出し、今にも涙が目からこぼれ落ちそうだった。

あてられた質問者も女子たちばかりだった。マイクランナーがマイクを質問者に手渡しても、みんな質問するよりも先にまずは「福山さん、大好きです」とラブコールするところから始まる。福山も「僕も大好きです」とお返ししていたが、度が過ぎる人に対しては「ありがとうございます。時間が限られているので、そろそろよろしいでしょうか」と言って進行を優先する一面も見られた。20年前からずっと福山雅治のファンだったという女性も「福山さんの映画は全部見ているんですけど、この映画の福山さんだけは全然かっこいいと思わなかったんです」と意見は厳しめだったが、福山はひとつひとつの質問に真摯に答えていた。是枝監督もファンを喜ばせようと思ったのか「次の人は福山さんにあててもらいましょう」というと、福山は回りを見回してしばらく考えたあと「僕には無理ですよ」と断っていた。最後に是枝監督が「これでティーチ・インを終わります」というと、客席から「えー!」のブーイングもあった。


印象的だったのは、福山雅治が男泣きするシーンである。このシーンに共感して涙したという女子は、このシーンを演じるにあたって、現場ではどんな雰囲気だったのかと福山に質問した。福山は次のように答えた。

「役者はプランをきちんと練って演技する方と、セリフだけ入れ込んで現場に来てからどう演技するか決めて行く方がいらっしゃって、僕は現場で起きることに反応して決めて行くタイプなんです。だからあの日、あのとき、あの場所で感じたことがそのまま出たと思いますが、おまり覚えてないですね。でもまた同じようにやれと言われても無理で、次の日や一週間後、一ヶ月後で演技は変わって行くと思います」

これには是枝監督もうなずいていて「僕も現場で反応してくれる人の方がやりやすいですね。ですから、できるだけワンテイク目を使うのが一番良いんです」と話していた。

最後に福山は「あつかましい意味ではなく、何度も見ていただきたいです。この作品の演者たちもお芝居なんだけど、限りなく生活に近い感じだったので、いかにも演技している作品は次は何が来るのかと思わず身構えてしまうけど、この作品は何度見てもその日によって受ける印象が違うような、生き物のような映画だと思っています。僕自身も20年、30年と何度も見ると思います。長年みなさんの心に寄り添える一本になれればと思います」とコメントしていた。

『そして父になる』は現在も全国で絶賛公開中である。(文・澤田英繁)

2013年10月29日 04時35分

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