南北朝鮮問題を描いた『レッド・ファミリー』が観客賞を受賞
第26回東京国際映画祭のコンペティション部門に出品された『レッド・ファミリー』の記者会見が、去る10月24日（木）、六本木ヒルズで行われ、脚本・製作総指揮のキム・ギドクと、ギドクに見いだされて本作で長編映画デビューを果たしたイ・ジュヒョン監督、主演のキム・ユミ、チョン・ウ、パク・ソヨンが出席した。
『レッド・ファミリー』は、朝鮮半島問題を描いた作品である。北朝鮮のスパイによる疑似家族と、資本主義に浸かった韓国の家族を通して、双方の家族の矛盾を描いている。
キム・ギドクのファンも多かった客席からは、朝鮮の南北問題に対してストレートな質問も投げかけられていた。ギドクは、「この映画は、朝鮮の南北統一を切に願って製作した作品です」と告白。「韓国では南北問題を扱った映画はたくさん作られていますが、アクションやコメディやアイドルを起用したものばかりです。私は違う形で南北問題を表現したかったのです。世間が現実問題について考える良い機会になればいいのですが」とコメントしていた。
ジュヒョン監督は「キム・ギドクから脚本を渡されたとき、自分は自信をもってこれを映画化できると答えられなかったことを申し訳なく思いましたが、自分の力でやっていくしかないという思いでやりました。空間という概念、個人のアイデンティティ、イデオロギーの衝突に焦点を当てました。この映画のテーマはジレンマだと思いました。ひとつ例をあげると、窓をあけて換気するとき、換気すると寒いじゃないですか。寒いけど換気しなければならない。人間はこのときどう判断するだろうか、そういったジレンマが一番自分が描きたかった部分です」とコメントしていた。
主演のキム・ユミは『ボイス』などで知られる女優。「大変な撮影だったので限界を感じて投げ出したくなったときもありました。でも最後までその気持ちに打ち勝って良かったです。この映画はずっと私たちが論じて行くべきものだと思っています。私自身もこの映画を見て色々なことを感じました。この映画を日本の方がどう反応してくれるか心配でしたが、昨日の上映で日本の皆さんも共感していただいたので、ありがたいことだと思いました」とコメントしていた。
本作は、深刻なテーマをユーモアを交えて描いているところなどが高く評価され、東京国際映画祭では最も多くの観客の支持を得て、記者会見の後日、観客賞に選ばれた。
