國村隼主演、園子温監督初の長編コメディ映画『地獄でなぜ悪い』したコメ映画祭で大好評
國村隼が主演、園子温監督にとって初の長編コメディ映画となる『地獄でなぜ悪い』が9月14日(土)に台東区で行われた「第6回したまちコメディ映画祭in台東」で上映された。
同映画祭は毎年台東区で行われるコメディ映画だけの映画祭。オープニングセレモニーには、総合プロデューサーのいとうせいこうを始め、台東区長、たいとう観光大使、イベントの主題歌を歌う浅草ジンタや、イベントのメインビジュアルを描いた辛酸なめ子の他、台東区フィルム・コミッション支援作品の『熱血硬派くにおくん』のキャストや、特別招待作品の『ウォーム・ボディーズ』からジョナサン・レヴィン監督が来日、太陽が暑く照りつける下、浅草公会堂前の通りに敷かれたレッドカーペットを人力車に乗って練り歩き、町行く人々から写真を撮られていた。
会期3日間にたくさんのコメディ映画を上映するこの映画祭で、一番の話題作が園子温監督の『地獄でなぜ悪い』だった。ヤクザの組長を演じた主演の國村隼と、その妻役の友近、愛人役の岩井志麻子と、園監督夫人の神楽坂恵がイベントに駆けつけ、舞台挨拶を行った。同作はこの映画祭のオープニングを飾った。
全国公開前の作品が、舞台挨拶付きで前売1300円というご奉仕価格。出す作品がことごとく批評家から絶賛される園子温監督の最新作がいち早く見られるということで、一般の映画ファンはもちろん、映画業界関係者もゾロゾロとやってきて、客席は2階・3階席までほぼ満席に。筆者のfacebookの友達(大方は映画業界者です)も上映前に「したコメでこれから『地獄でなぜ悪い』見ます」的なコメントを書く人が大量発生して、ロビーで偶然色々な会社の映画宣伝マンと再会なんてことも何度かあった。その度に「やっぱりみんな園監督が好きなんだな」とその人気の高さを肌で感じたものである。
非常に映画ファン受けの良い園監督だが、『地獄でなぜ悪い』は、嬉しいかな「映画についての映画」である。ヤクザたちが本気で映画を製作するというストーリーだ。舞台挨拶では同作に友情出演している水道橋博士の口から「監督から言うように言われて来たのですが、この映画は監督自身が体験した実話がもとになっているんです」と明かされた。長谷川博己が怖いもの知らずの熱血映画監督を演じているが、このモデルが園監督なのだという。園監督自身のオリジナル脚本による初の長編コメディ映画は、全編に園監督の映画、フィルムに対する愛にあふれた作品となった。
舞台挨拶で、國村は「この映画のお話を頂いた時に、これは大変だと正直思ったんです。いつも通じゃダメだと思い、自分の中の120%の力を振り絞って挑みました。肉体的には疲れましたが、精神的にはスッキリする作品でした。今回、神楽坂恵さんは、僕の愛人2号として出ていますが、園監督の本当の奥様でもあるので、愛人として演技するのは正直やりずらかったです」とコメント。神楽坂は國村と共演したシーンを指して「監督は目を伏せてしまうんです」と話していた。極妻役に挑んだ友近は「芸人界のセックスシンボルこと、友近です」とノリノリで挨拶していた。
映画の上映では、観客がドッと大笑いしたり、かっこいいシーンで拍手したり、笑い声が笑い声の連鎖を呼んで、観客全員が一体となって映画を楽しんでいるような空間ができあがった。とくに後半は爆笑の連続でとにかく気持ちがよかった。何より作品全体からほとばしる監督の「天才オーラ」が心地好い。最後の「監督 園子温」の文字が出たところでは大拍手が巻き起こった。時を同じくして、このイベントの裏ではカナダのトロント映画祭で同作が観客賞を受賞したのもうなずける。大きなスクリーンで満席の客席で見ることの醍醐味を改めて実感した思いである。(澤田)
『地獄でなぜ悪い』は、9月28日(土)封切り。新宿バルト9ほかにて全国公開。