『ウォーム・ボディーズ』ジョナサン・レヴィン監督はカラオケ好き
2013年9月14日(土)、浅草公会堂にて、『ウォーム・ボディーズ』のジョナサン・レヴィン監督(37)が上映後にティーチインを行った。
「第6回したまちコメディ映画祭in台東」のプログラムのひとつとして特別招待されたロマンティック・ゾンビ・コメディ『ウォーム・ボディーズ』の上映にジョナサン・レヴィン監督が招かれ、初来日を果たした。レッドカーペットイベントでは人力車に乗って会場に訪れたレヴィン監督をゾンビたちが出迎える演出もあったが、レヴィン監督は「浅草に足を運べてとても嬉しい。浅草の町は、美しくて、東京の違う面を見る事が出来た。人力車をひいていた人が途中でバテないかと心配したよ」と満面の笑顔で挨拶していた。レヴィン監督は同映画祭では今年唯一の外国人ゲストである。
上映後は、お客さんからの質問に直接レヴィン監督が答えるQ&Aが行われた。最前列中央に座っていた男性が真っ先に手を挙げ、「大変面白く拝見しました。最初はバンパイアと人間の恋を描いた『トワイライト』みたいな映画かと思っていたのですが、バルコニーのシーンを見てこれは『ロミオとジュリエット』だと思いました。主人公の名前がRでヒロインの名前がジュリーなのも『ロミオとジュリエット』を想像させますが、監督は何か影響を受けた作品はありますか?」という質問。レヴィン監督はガムを噛みながら「『ロミオとジュリエット』みたいなのは、原作の設定なんだ。ムードなどの描き方は原作をもとにしているけど、構図とか色彩設定などはたくさんの映画を見て参考にした。もちろん、君の言う通り、『ロミオとジュリエット』は参考にしているけど、他にもバズ・ラーマン監督の『ロミオ+ジュリエット』も見たし、ゾンビ映画もたくさん見て研究したんだ。『28日後...』、『死霊のえじき』も見たし、終末の見せ方では『トゥモロー・ワールド』にもインスピレーションを受けた」と回答した。
この映画、いわゆるツッコミどころ満載なところも多数あるのだが、そこは愛嬌というもの。コメディなんだからいちいち細かいところは気にしない気にしない。ところが、「ゾンビがのろのろ歩いたり走ったりすることがあったのですが、どういうことですか?」という、監督本人に実際にツッコミを入れる猛者も登場した。レヴィン監督は水をがぶ飲みして「ゾンビは現実のものじゃないんだから、そこは監督が好きに描いてもいいんじゃない?」と開き直りつつも、「ロメロ的なゾンビも残すべきだと考えていたけど、人間的なものも残したかったから走らせたんだ。ゾンビの動きはシルク・ドゥ・ソレイユのテクニカルダンサーに指導してもらったんだ。主役のニコラス・ホルト演じるRには、同じゾンビの親友がいるんだけれど、演じる際に、背中合わせでゾンビの動きを練習してもらったり、注文が多い中で、彼らは本当によくやってくれた。2人の撮影中には必ず笑いが起きていたんだ」と話していた。
お客さんから映画の主人公の癖である肩をすくめる仕草を監督にやって欲しいとリクエストもあった。監督は「僕よりニコラスの方が上手だよ」といいながらも、照れくさそうにやおら肩をすくめる真似をしてくれた。
監督の趣味はカラオケということで、この日の前日、本場日本のカラオケボックスに遊びに行ったという。レヴィン監督のレパートリーは幅広く、なんでも歌えるようだが、特にロックが得意な様子で、そのロックの選曲のセンスは映画の中でも生かされている。十八番はブルース・スプリングスティーンとのことで、映画の中でもスプリングスティーンの名曲が引用されている。「このあと、ここにいるみんなとカラオケに行きたいね」とご機嫌で語っていたレヴィン監督は、よく見るとマイクの持ち方がいかにもロック歌手風であった。
腹が減ったら仲間たちと街に繰り出しハンティング。敵対するゾンビと人間の男と女の適わない恋? 『ウォーム・ボディーズ』は、ゾンビ側の視点からゾンビ映画を描いた作品である。それは一粒の涙を誘う、人類愛をテーマにした感動のドラマである。同作は、2013年9月21日(土)からシネクイントほかにて全国ロードショーされる。(澤田)