『麦子さんと』でアニヲタ女子を演じる堀北真希がやばいくらい可愛すぎる件
8月29日(木)、新橋にて『麦子さんと』の完成披露試写会が行われ、主演の堀北真希と、吉田恵輔監督が舞台挨拶を行った。年末公開予定の映画だが、この映画の堀北真希があまりにも可愛すぎると公開前から早くも口コミで話題になっている。
『麦子さんと』はコメディ映画であるが、堀北真希が演じる主人公はアニメオタクで、声優を目指す女の子を演じていて、どうやら彼氏らしい人物も出て来ないし、いわゆる”萌え”系の声の演技も披露している。森永アロエヨーグルトのCMのちょっとイケてなさげなダンスがやたらと可愛かった堀北だが、そんな堀北が長編映画に出てきたような感じで、あまりにも可愛すぎるともっぱら評判である。
吉田監督による完全オリジナルストーリーの脚本で、構想8年を費やし、吉田監督は勝手に堀北真希を主役に想定して書いていて、ずっと堀北真希に執着していたそうで、もう他の女優など絶対に考えられない状況だったという。それが堀北の主演で実現したことから、もう監督のやる気からしてただならぬものがあったようだ。
堀北は最初から主演を想定して脚本が書かれたことに対して「光栄です」とコメント。吉田監督は「堀北さんに執着しすぎて、逆に気持ち悪いと思わなかった?」と心配していたが、堀北は「思ってないです」と優しい声で微笑みかけていた。その笑顔は、我々記者も撮影していて癒されるほど。実際我々マスコミの間でも取材するたびに色気が増して来ていると評判である。吉田監督も「会う前はほんわか、のほほんとしているイメージだったのですが、実際会ってみると、(真冬に夏のシーンを撮ったから)氷点下なのに寒い格好をさせても嫌な顔ひとつせずにやってくれて、本当にプロだなと思いました」と堀北真希を主演に撮れた幸せを噛み締めていた。
コメディの見せ方も、ギャグのセンスが絶妙で、ストーリーといい、小道具の使い方といい、あらゆるところで高いレベルでまとまっている作品だが、何よりこの映画は、役者の存在感なしには語れない作品である。吉田監督による完全オリジナルの映画は、小説や舞台などにはない、映画らしさが詰まっている作品である。この映画の堀北真希はテレビドラマやCMではない「映画女優」としての堀北真希の魅力がたっぷり詰まっていると言える。
特筆すべきは、シーンを映像で説明するのではなく、役者のセリフだけで語らせるところである。この映画は、観客に映画を見ながら”想像させる”力を持った作品である。余計な映像がないからこそ、役者のセリフに自分だけの想像の光景を重ね合わせて見ることになる。だから映画を見終わった後もその余韻が半端ないのである。
その意味では、母親役の余貴美子の存在も忘れてはならない。吉田監督が言うには、最初は堀北真希とは似ても似つかない怪物系の太った女優を使う予定だったが、インパクトよりも、見ていて胸が苦しくなる母性を感じさせてくれる女優は誰かと考えたところ余貴美子が最適ということになったという。筆者は余貴美子のこれまでの作品の中でも、過去最高の名演技を見せてくれたと思っている。筆者は日本アカデミー賞を取った『おくりびと』の余貴美子よりもこっちの余貴美子の方が好きである。
この映画の根底にあるテーマは「母」である。吉田監督はこの映画を作るにあたって、「親に対してどう接すればいいかわからなくて、自分は親不孝の鑑みたいなものでした。母は病弱なのに心を開けない自分がいました。本当は母親にいいたいことを表現できたらいいなというのが今回の目的でした」と語っていた。この映画は母への愛にあふれた作品になっているが、この作品が完成する前に吉田監督は母親を亡くしている。だから吉田監督にとっては、この映画は足掛け8年、何として完成させなければならない執念の作品だった。筆者はこの映画を見て、「この映画には魂が宿っている」と感じたのが正直な感想である。心にしみいる一本だと思う。
松田聖子の『赤いスイートピー』が、今回初めて映画の挿入歌に使われている。吉田監督は、是が非でもこの曲を映画で使用する権利を取りたかったそうだ。吉田監督は「親子の話に恋愛の歌は実際は結びつかないけど、小学の低学年くらい、ちょうど『赤いスイートピー』が家族で団らんしていたときに流れていた曲。勝手に結びつけたのですが、僕にとっては切り離せない曲です」とコメントしていたが、筆者は監督が”僕にとっては”といったところが良いなと思った。個人的な思いを作品にしたという。久しぶりに映画の中に作家性を感じさせる監督を見た気がする。『赤いスイートピー』を使っていることは効果を上げていて、映画を見終わった後も脳内リフレインが止まらないほどだ。
堀北は締めくくりに「お母さんてすごい近いようで知らない。自分のお母さんが、お母さんになる前はどんなんだったんだろうと、私もこの映画をみてすごく思いました。皆さんもそういう風に思ったら母親との距離も近くなると思います」とコメントしていた。
そういえば自分も母親が若い頃何をしていたのかまったく知らなかった。というよりも考えたことがなかった。親孝行という親孝行もまだ何もしたことがない。でもこの映画を見たとき、無性に親孝行がしたくなった。筆者は、この映画を母に見せることもひとつの親孝行になると思っている。劇場公開が始まったら、ぜひ母をこの映画に連れて行きたいと思う。
『麦子さんと』は、12月21日より、テアトル新宿ほか全国公開。(文・写真:澤田英繁)