ヒュー・ジャックマン「日本で撮影する夢が叶った」とコメント
8月29日(木)、目黒雅叙園にてSFアクション映画『X-MEN』シリーズ最新作『ウルヴァリン:SAMURAI』の記者会見が行われ、主演のヒュー・ジャックマンと、日本人キャストの真田広之、TAO、福島リラ、監督のジェームズ・マンゴールドが登壇した。
『ウルヴァリン:SAMURAI』の最大の特徴は、日本が舞台になっていることである。だから『ウルヴァリン:SAMURAI』というタイトルなのだろうが、実は原題は”THE WOLVERINE(ザ・ウルヴァリン)”とあり、そこには"SAMURAI"の文字は見えない。つまり日本を舞台にしていながら、これこそウルヴァリンそのものなのである。ヒュー・ジャックマンは、『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』のプロモーションでも来日しているが、そのときには「パート2は日本で撮るから」と言い放った。有言実行とはこのこと。本当に日本で作ってくれたのである。
洋画の中の日本はたいていおかしなものになっていたりするが、この映画はちゃんと日本ロケしているので、日本の和の世界が良い具合に反映されている。この世界を意識して、記者会見の場所も目黒雅叙園の畳の間という、いかにも日本らしい場所で行われた。スタッフもみんな黒子の格好をしていたが、ヒュー・ジャックマンはこの演出を大層気に入ったようで、「こんなに靴を脱いだ人を一度に見たのは初めてです。黒子の人も本当はマット・デイモンかベン・アフレックなんじゃないでしょうか?」とコメントして記者陣を沸かせていた。
世界各国で公開されている『ウルヴァリン:SAMURAI』は、『X-MEN』シリーズの中でもすでに最高の興行収入を獲得している。それがいよいよ日本に凱旋上陸となった。ヒューも日本での興行収入にかなり期待しているようで、会見でも最初に「日本は『レ・ミゼラブル』の興行収入が世界中の他のどこの国よりも一番良かったのです。まずはそれに感謝します」と挨拶したほどである。日本はハリウッドにとって海外でも最重要のマーケットなのである。
ヒューは「日本で撮れたことを誇りに思います。日本が大好きで、日本で撮影したいと前から思っていたので夢が叶いました」とコメントしており、「ヒューヒュー!」と日本の若者言葉でおどけたりと、本当に日本が好きだという気持ちが伝わって来た。撮影中、日本での生活も充実していたようで、「日本人も食べ物も文化も好きです。日本人って本当に姿勢がいいんです。よく私は母に姿勢をよくしなさいと叱られたんですけど、母はただ日本に送ってくれれば良かったんですね。そうすれば姿勢もよくなったから(隣の真田がこれを聞いて背筋をしゃきっとする)。北海道でスキーにも行ったし、京都にも行きました。鞆の浦、福山では釣りもやりました。私は一匹も釣れませんでしたが。2日間休暇をくれたので、息子と富士山にも登りました。驚いたのはラブホテルでした。ラブホテルを見て、”これかっこいいね”と言ったら、”本当にあるんだよ”と言われて、もちろん撮影のためにリサーチも行いました」と発言。「私は東京を見回して、どうやってこれだけ多くの人たちがいるのに、すべてがうまく機能しているのかと思います。東京に来ると、誰でも帰りたくなくなってしまうでしょう」という嬉しいコメントもしてくれた。
真田は、日本文化の描写について、「美術スタッフが具体的に訊きに来てくださったときには少しでも自分が関わった以上はおかしくないものにしたいとお話をしたのですが、アメリカンコミックのテイストも生かした日本を作るということで、映画ならではのオリジナルの日本を描く事に時間を費やしました。それをまた日本の方にも新鮮な日本として楽しんでいただければと思います」と話していた。その意味では、ファンタジックな日本ということで、大いに映画も楽しめる内容になっているといえるだろう。
これが映画初出演にしていきなりハリウッドデビューとなったTAOは、「私は、ヒュー・ジャックマンのファンで、それがきっかけでオーディションを受けました」と大胆暴露。「監督にふれて、お芝居というものに恋をしてしまって、2人に新しい人生の扉を開いていただきました。不安でしょうがなかったんですけど、真田さんに”なんで私が選ばれたのかわかんないんです”と弱音を吐いたことがあって、真田さんが”TAOは味のついてない魚なんだ”と言って、”監督も味のついてない魚を料理したいという気持ちになることがある”と例えていただいて、”私はまな板の上の鯉なんだな”と肩の荷が下りました」とコメントしていた。
それを聞いて大笑いしたマンゴールド監督は「真田さんの意見には同意できませんね。魚はどんな魚でももともと味があると僕は思っています。TAOとリラには内側からもたらす素晴らしいものがあると思いました。僕の仕事はそれを導いて、画面に投影することでした。アスリートというのは生まれもって足が早かったりします。演技も生まれもって才能を持っていて、役者が持っている精神を教えることはできないんですね。その意味ではお二人は素晴らしい女優さんでした」と話していた。ヒューは「まったく演技経験のない役者を起用することは大変な勇気です。監督のその勇気を称えたいです。2人の美しい女優さんの演技は最高でした」と付け加えていた。
作品の大きな見せ場は、ヒュー・ジャックマンと真田広之の激しい殺陣のシーンである。CGではなく、男と男の激しいぶつかりあいが迫力のアクションで描かれている。このシーンについて、ヒューは「真田さんは日本の”国宝”と知っていましたから、傷つけなくてホッとしました。というのも僕は他のX-MENでは2人刺してしまったし、自分が15回くらい傷つけていたので」とコメント。一方、真田は「オーストラリアの国宝を傷つけなくてよかったと思います。ヒューヒュー!」とおどけてみせ、「上半身裸ですから、少しでも当たれば傷つけてしまう。そうすると世界中のファンに殺される。それ以前に役をおろされます。ドラマとアクションのきっちりとしたリンクを狙ってくださったので、一点一点にお互いの感情が乗って良いシーンになったと思います。ウルヴァリンが死に直面して復活するシーンに立ち会えたのは幸せでした。ダンスしているような、演技を超えたグルーヴ感を味わえましたし、それを監督が切り取ってくれました。一発でOKも取れて、非常にスムースに進みまして、相手に恵まれて幸せでした」と共演者と監督の手腕を絶賛していた。
『ウルヴァリン:SAMURAI』は、9月13日(金)TOHOシネマズ日劇他全国ロードショー。(取材・澤田英繁)