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『マン・オブ・スティール』ヘンリー・カヴィル演じる新スーパーマンについて

8月22日(木)、六本木にて『マン・オブ・スティール』の記者会見が行われ、主演のヘンリー・カヴィルと、ザック・スナイダー監督、プロデューサーのデボラ・スナイダーとチャールズ・ローブンが登壇した。

『マン・オブ・スティール』は、米DCコミック原作のあまりにも有名なヒーロー『スーパーマン』を描いた作品である。しかし、今回のスーパーマンはただのスーパーマンではない。


『スーパーマン』というと、クリストファー・リーヴが主演した作品が最も有名で、1978年から1987までに合計4本の作品が製作される人気シリーズだった。それから約20年後、突然ブライアン・シンガー監督が『スーパーマン リターンズ』で現在のCG技術でスーパーマンを蘇らせた。『リターンズ』の登場は子供の頃に『スーパーマン』を見ていたファンを驚かせた。『リターンズ』はクリストファー・リーヴ版をかなり意識した内容で、映画も大ヒットを飛ばした。続編の製作も決まっていたのだが、様々な事情が重なり、進められていた続編の企画は白紙になってしまったのである。映画というものは観客に育てられて成長していくもの。『リターンズ』はワーナーが望んでいたスーパーマンに成長してくれなかったというのが製作中止の大方の理由だったようだが、この『マン・オブ・スティール』を見ると、なぜ『リターンズ』の続編製作を中止したのか、その理由がはっきりわかる。ワーナーは、まったく異色の『スーパーマン』を作りたかったのである。


ワーナーはDCコミック原作の人気シリーズ『バットマン』を終了させて、『バットマン ビギンズ』というまったく新しいバットマン映画を作って大成功を収めた。今度は『スーパーマン』をリブートするときが来たのである。『バットマン ビギンズ』からクリストファー・ノーランが製作に乗り出し、『300<スリーハンドレッド>』のザック・スナイダーを監督に抜擢した。スナイダー監督はフルチンのヒーローを描いた『ウォッチメン』の監督でもある。ノーランが製作、スナイダーが監督となれば、ただの『スーパーマン』ができるはずがなく、いわゆる「正義の味方スーパーマン」とは違ったスーパーマンがそこに誕生した。あえて『スーパーマン』というタイトルにしなかったのも、それまでのスーパーマンをイメージさせたくなかったからだと、プロデューサーのチャールズ・ローブンは語っている。


『バットマン ビギンズ』では英国人俳優のクリスチャン・ベールがバットマンを演じていたが、『マン・オブ・スティール』でも、初めて英国人俳優ヘンリー・カヴィルがスーパーマンを演じることになった。カヴィルはクリストファー・リーヴみたいに体格ががっしりとしたタイプの俳優である。これまでこれほど大きな役を演じたことはなかったカヴィルだが、記者会見でも「4人の中で一番最後に話をするのは緊張するね」とやや緊張気味だった。この役をもらってからは生活も変わったようで「今までは役のオファーがあれば必ず出演していたけど、この映画に出てからはオファーがたくさん来るようになって、今では脚本を読んでからどれにするか選ぶようになった。町中を歩いていても他人から声をかけられるようになったし、気軽にスターバックスにも行けなくなったよ」とコメントしていた。


記者席にはスーパーマンの格好をした渡辺直美も来ていて「飛べるなら日本のどこに飛んで行きたいですか」とカヴィルに質問していたが、カヴィルは「良い質問だね。日本全国に行ってみたいけど、どこかひとつあげるなら噂にもよくきく京都か、富士山だね。僕は自然と運動が好きで、山登りは自然と運動の両方が楽しめるから大好きなんだ。富士山にも以前から登ってみたいとずっと思っていて、8月から10月くらいが一番良い時期だと聞いているから、ぜひ休みを取って、また日本に来て登りたいと思っているんだ」と回答していた。富士山についてはかなり興味を示していて、具体的に登山の計画を話していた。


記者から衣装についての質問もあった。なぜ赤いパンツをはいてないのかという質問だが、スナイダー監督は「赤いパンツをはいて欲しかったのかい?」と笑いながらも「タイツの上にパンツをはく起源について考えたんだ。そしたらビクトリア王朝時代に行き着いてね。あの時代は肌を見せることが許されなかったからタイツの上にパンツをはいていたんだ。スーパーマンが今まで赤いパンツをはいていたのはその理由からじゃないかと思ってね。今度のスーパーマンは21世紀のスーパーマンだから、ビクトリア王朝時代に戻る必要はないと思ってパンツははかせなかったんだ」と冗談なのか本気なのかわからないコメントをしていた。


この映画では色彩の鮮やかさを落とした映像美が追求されているため、青いスーツも、映像では黒ずんで見える。そのスーツの黒さが今までの『スーパーマン』になかった新感覚のヒーロー像になっている。衣装には色やパンツの他にも様々の工夫があるが、Sマークは健在だった。ここに作り手のコダワリが感じられる。今時胸にスーパーの頭文字のSなんてセンスが古臭すぎると思っていたら、そこに別のもっともな理由をつけて、新しいセンスに変えているのである。


見どころは、スーパーマンから感じられる、ただならぬ怒りの強さである。『リターンズ』でアクションが足りなかった反省もあり、『マン・オブ・スティール』では激しい破壊バトルを繰り広げてくれる。パンチの一撃にも怒りを感じる。目から出るレーザー光線もギラギラと憎しみに満ちているような感じである。薄っぺらいアクションではなく、ひとつひとつのアクションに魂の一撃が込められているため、普遍的で味わいが深く、見終わった後よりも、何日かして後からじわじわと感動がこみ上げてくる映画である。


ちなみに、「ヒーローものが脇役が豪華キャスト」と言われるようになったのはクリストファー・リーヴ版の『スーパーマン』が最初である。クリストファー・ノーランは『バットマン ビギンズ』のメイキングで『スーパーマン』のキャストの豪華さに影響を受けたと話しており、『マン・オブ・スティール』でも脇役にラッセル・クロウの他、ケヴィン・コスナー(吹き替え版の声はもちろん津嘉山正種)、ダイアン・レインを起用するなど豪華キャストを実現している。久しぶりにスクリーンで見るケヴィン・コスナーとダイアン・レインがなかなか良い。(澤田)

マン・オブ・スティール』は、8月30日(金)新宿ピカデリーほか全国公開<3D/2D 同時公開>

2013年8月25日 04時31分

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