『終戦のエンペラー』トミー・リー・ジョーンズのマッカーサーはハマリ役
7月18日、有楽町でアメリカ映画『終戦のエンペラー』(7月27日(土)全国ロードショー)のジャパンプレミアが行われ、マシュー・フォックス(46)、トミー・リー・ジョーンズ(66)始め、日本人キャストの初音映莉子(31)、西田敏行(65)、桃井かおり(62)、羽田昌義(36)、中村雅俊(62)、伊武雅刀(64)、イギリス人監督のピーター・ウェーバー(53)、プロデューサー陣の奈良橋陽子、野村祐人、ゲイリー・フォスターが舞台挨拶を行った。
本作は、太平洋戦争終結後、アメリカの占領下にあった日本を舞台に、史実をもとに描いた歴史ミステリー大作である。歴史ファン、戦争映画ファンにとっては、まさにお待たせしましたという内容だ。トミー・リー・ジョーンズは、ダグラス・マッカーサーを演じているが、ハマリ役である。その雰囲気はマッカーサーそのもの。サングラスをかけてコーンパイプをくわえるシーンを見ただけで何だか妙に嬉しくなってくる。ジャパンプレミアでは厚木飛行場のタラップを彷彿させるエスカレーターからトミー・リー・ジョーンズが下りてくるという粋な演出もあった。
本作は、終戦直後を描いている作品なので、他の戦争映画とは一線を画する内容だが、アメリカ映画なので、そのスケールの大きさ、金のかけ方からして日本映画とはワケが違う。本作では初めて皇居での撮影も実現している。セットや衣装・音楽など、そのすべてがハリウッドの技術レベル。そして不朽の名作『市民ケーン』を見ているようなワクワクするような編集の妙味。恐らく日本映画で同じことをやってもこれほどの作品にはならなかったと思わせる極上のエンタテインメント作品に仕上がっている。そのレベルの中に日本人キャストがいること、英語のセリフ、そのぜいたくを満喫していただきたい。
舞台挨拶で中村雅俊は「日本を誇れる映画になっている」と話していたが、これほど日本への愛国心を感じられる映画が、アメリカが作ったというところが何よりも感動的である。日本が日本を描いた日本映画ではなく、アメリカが日本を描いたアメリカ映画だということは、本作で最も興味を引くポイントである。しかも監督はイギリス人で、映画はニュージーランドで撮影された。これだけのプロジェクト、よくぞ作ってくれたと、拍手を送りたい。
このプロジェクトを実現させたのが、奈良橋陽子と野村祐人の親子である。レッドカーペットに登場したときに奈良橋親子がまたなんとまあ生き生きと嬉しそうな表情をしていたことか。企画から始まり、これほど大きなプロジェクトがこうしてひとつの形になったのだから喜ぶのは当前である。舞台挨拶でも野村は万感胸に迫り、声を詰まらせていた。
本作はミステリー映画である。戦争という罪を犯した犯人は誰なのかを突き止めるべく、マシュー・フォックス演じるフェラーズ准将が調査していく物語である。歴史というものの中には、謎のベールに包まれたものが多く存在する。その謎を解く鍵を握っているのは当事者たちであるが、その一人として登場する人物が宮内省の側近として昭和天皇に仕えた関屋貞三郎である。実はこの人が奈良橋の祖父だということが舞台挨拶で西田敏行の口から明かされ、来場者を驚かせた。奈良橋はいつも祖父から戦争の話を聞いていたという。そのことは、この映画で描かれている出来事により真実味を加えている。関屋を演じたのは夏八木勲だ。本作が遺作になった。奈良橋が舞台挨拶で「夏八木さん、見てますか」と語りかけていたのが微笑ましい。
週刊シネママガジンでは、『終戦のエンペラー』をもっと楽しく見てもらうために、太平洋戦争についてこちらで詳しく特集しています。映画を見る前に合わせてチェックしていただけますと幸いです。(澤田)