『オブリビオン』トム・クルーズ来日、『2001年宇宙の旅』と『アラビアのロレンス』に影響された
5月7日(火)、『オブリビオン』のPRのために来日した主演のトム・クルーズ、共演のオルガ・キュリレンコ、監督のジョセフ・コシンスキーが、ザ・リッツ・カールトン東京にて記者会見を行った。
トム・クルーズの親日家ぶりは有名で、今年は1月に『アウトロー』で来日したばかり。あれから4ヶ月もたたないうちに再来日を果たし、前日まで沖縄旅行を満喫したとのことだ。今回でなんと数えて19回目の来日という。
トムは「今日は素晴らしいお天気で何よりです。スケールも大きく、映像も大変美しい映画。少なくとも数回ご覧になれば見るたびに新しいものを得られるという映画です。SF映画は『マイノリティ・リポート』、『宇宙戦争』、『バニラ・スカイ』に出ましたけど、これらとはまったく違った、今までに見たことがない映画になっています。今回は誇りを持って、この映画を携えてきました。日本の方々の暖かい歓迎、心から感謝します」とコメント。さらに「日本には19回もお邪魔していますが、もちろん京都の郊外で映画を撮ったこともありますし、とにかく日本は美しいので、ここで映画を撮るのは僕の夢です。日本の文化は特別なものです。19回も来てるけど、あと19回来てもいいくらい日本が好きです」と語った。
一方、オルガは『007/慰めの報酬』でボンドガールを演じていて、来日はそのときのプロモーション以来2度目だ。今回は10日間も日本に滞在するというから、今後は日本をひいきにしてくれそうである。撮影中、バイクに乗って110キロで砂漠を疾走するシーンでは、トムの後ろに乗っているのに怖くてハンドルを握ろうとして運転の取り合いみたいになったことを明かし、「私はいつも共演者を一度殺しそうになるの。今回もトムを危うく殺しそうになったからトムは私のことをずっと覚えていてくれると思うわ」と冗談を言って記者陣の笑いを誘っていた。
最後に注目していただきたいのはコシンスキー監督だ。『トロン:レガシー』が初監督作で今回は2作目。『オブリビオン』は、コシンスキー監督が8年前から構想を続けていたといい、SF映画の大作を撮りたかったという夢を実現させた作品である。2作目とは思えない大作に仕上がっており、しかもキューブリックからスピルバーグまで巨匠たちの作品に多数出演しているハリウッドのトップスター、トム・クルーズが主演という、早くも今後巨匠になる資質を十分に備えていることをうかがわせる、将来が楽しみな若手監督である。トムは「ビジョンを持って生まれた監督です。色々な名監督と一緒に仕事をしましたけど、アイデアと発想力、独特の世界をクリエイトする優れた監督であると感心しました。スカイタワーのデザインから、ストーリーをつけて、カラーつけて、環境を作っていく手腕に惚れ込みました。照明から演技をつけるところまでとても細部まで見ていました」とコシンスキー監督のことを絶賛していた。
CGでベタベタにされた映画が多い昨今の映画シーンの中で、目に見えるものを撮影することにこだわったコシンスキー監督のやり方はかなり貴重といえる。これはデヴィッド・リーン監督の『アラビアのロレンス』のスタイルとスタンリー・キューブリック監督の『2001年宇宙の旅』の技術が融合したものである。『アラビアのロレンス』が凄かったのは、カメラの前にすべてのものが実際にあったということである。『2001年』ではフロントプロジェクションという映像合成技術が初めて使われた作品だった。映像手法としてはいずれもクラシックなものである。
「今回は『アラビアのロレンス』を意識しました。できるだけ目に見えるものをカメラで捉える気持ちで、ブルースクリーンの映画にはしたくなかったのです。できるだけ実写で撮りました。そのためロケーションで、アイスランド、ニューヨーク、カリフォルニア北部、ルイジアナ州にも行きました。そこにフロントプロジェクションスクリーンに実際の映像を映したのです。SFですから存在しないんですけど、できるだけリアルな映像を目指しました」とコシンスキー監督。
記者から『2001年宇宙の旅』の共通点を指摘されると、コシンスキー監督は「その通りです。『2001年』というのは、冒頭の部分でフロントプロジェクションで写真を投影していました。今回はそれをアップデートしまして、21世紀の手法にして、巨大なスクリーンに高解像度のビデオフッテージを投写してるんですね。フッテージというのはマウイ島の火山の上から撮った映像なんです。この手法は『2001年』から採ってます。あの映画自体、私にとって最も影響のあった作品といっても過言ではないのです。キューブリックはあの映画の中で、もし人類が他の知的生命体にであったときにどういう出会いをするのかということを描写していたんですけど、よく他の映画では宇宙船から緑色の小さな生物みたいなものがおりてくるというのが多い中で、私はこの映画が始まる前に、科学者たちとミーティングをしまして、もし実際に人類が他の生命体とであったとき、どうなるのかと話し合いました。そして、『2001年』のようになるんじゃないかという話をしまして、人類がいかに困難の中で勝利するかというのをこの作品で伝えたかったのです」と話していた。
近未来アクション映画『オブリビオン』は5月31日(金)TOHOシネマズ日劇他全国ロードショー。