吹替ファンよ、集まれ! 玄田哲章に聞くシュワルツェネッガーあれこれ

4月14日(日)、シネマート六本木で、東京国際映画祭ならぬ、第一回東京国際”シュワ”映画祭なる映画祭が行われた。この映画祭、実は今年映画界に復帰したアーノルド・シュワルツェネッガー(シュワ)を愛でるための映画祭なのである。
シュワは最近まで政治家として活躍していたために10年も映画に主演していなかった。しかしシュワは、80年代から90年代にかけては最も日本国民に愛された映画スターといっても過言ではなかった。『ターミネーター2』、『プレデター』など、テレビでも放映すれば決まって高視聴率を取ったもので、子供たちはみんなシュワの大ファンだった。
かくいう僕もそんなシュワ信者の一人。好きな俳優は誰かと聞かれたら迷わず「アーノルド・シュワルツェネッガー」と言うほどの大ファンである。思えば、シュワの映画の多くはテレビで見ているから、字幕よりも吹替で親しんだものだった。シュワのファンを公言する人たちも「シュワの映画は吹替で見る派」が多い。この映画祭はその点もちゃんとわかっていて、『プレデター』、『コマンドー』、『ラストスタンド』をぶっ続け3本立て、吹替版で上映したのである。まさに我々のためにある映画祭だった。
『コマンドー』完全日本語吹替版
この映画祭で『コマンドー』が上映された背景として、4月18日に『コマンドー』の「コレクターズBOX」が発売されることを書かねばなるまい。なぜ「コレクターズBOX」なのかというと、テレビ朝日版とTBS版放映当時の吹替台本をダブル復刻封入!しかもシュワの声と言えばこの2人、屋良有作と玄田哲章、それぞれの音声で収録している。さらに、欠落部分はなんと!追加収録しているという、まさに完全版である。『コマンドー』の「来いよベネット!」のセリフは僕も子供の頃に真似したものであるが、比較してみると屋良さんと玄田さんとでセリフが全然違っていて、吹替の醍醐味ここにありという感じである。
吹替版の良さ
よく字幕版と吹替版、どちらがいいかという議論が交わされる。どっちがいいか、これを考えるのは不毛なこと。ただ、ひとつ言わせてもらえば、「吹替なんかもってのほかだよ! 映画は字幕で見るものだろ!」とか言ってる輩だけは許せないので、そういう圧力には僕も反発している。
字幕版は、字幕が出た瞬間にこれから言うセリフがわかってしまうから感動にタイムラグが生じてしまう。セリフが原語よりも短くなっている上に、字幕に気を取られていると映像のディテールを見逃してしまいがちだ。その点では吹替版に軍配があがる。
一方、役者の本当の声を聞くなら、字幕版に軍配が上がる。日本語の演技じゃ役者の些細な声の演技も違ってくるから、どうしても吹替だと本物の役者の声に負けてしまう。
つまりは一長一短。どちらにも良いところと悪いところがあるから、何を求めるかで選択肢が違ってくるわけだから、どっちがいいかを議論するのは問題外。ただ、本当の映画ファンなら、両方の良さがわかってしかるべきだと僕は考える。
玄田哲章さん登場
この映画祭では特別ゲストのトークショーもあった。現在、シュワルツェネッガーの声は必ずこの人が演じている。玄田哲章さん(64)である。この登場に吹替野郎は大興奮だ。玄田さんは普通に喋る声からしてシュワそのもので、内心僕も「おおお!」と感動してしまった。
玄田さんのお気に入りは『ターミネーター2』、『トータル・リコール』、『トゥルー・ライズ』。とくに『トゥルー・ライズ』にはかなり思い入れがあって、『トゥルー・ライズ2』も実際に作る予定だったのに、政治活動に移ったことでその企画がなくなったことに悔しさをにじませていた。もともとコミカルな役が得意の玄田さん。『トゥルー・ライズ』のコミカルなセリフをその場で即興で披露してくれて、拍手喝采を浴びていた。
また、思い出に残っているセリフについて聞かれた玄田さんは「『ターミネーター2』のあのセリフですよ。あのセリフは日本語のセリフではなく、原語の方が有名になっちゃったでしょ。でもあれは吹替版にはないセリフなんですよ」と回答。そう、「また来る」というセリフの字幕版のアレである。MCのコトブキツカサは「今そのセリフは間違ってもここで言っちゃいけないですね。吹替ファンが集まってるのに、炎上しちゃいますから」と言っていたが、玄田さんの方から「アイルビーバック!」と演技してくれて、客席は大盛り上がりである。というより、玄田さんがこのセリフを英語で言うのは、何か違っていて、妙に面白かったのだが。
『ラストスタンド』でシュワ完全復活
さて、10年ぶりの復帰映画『ラストスタンド』である。僕もこの映画祭で見させてもらったが、すごく期待していたけど、その期待を裏切らず、それ以上の傑作だった。老けたことへの不安もあったけど、その不安も吹き飛ばしてくれた。玄田さんも「良い具合に枯れている」と評価していたし、「やっぱりシュワは主役じゃないといけないと思った。この映画を見て、戻ってきた!と思った」と語っていた。
僕も記事だからわざと褒めてるのではなくて、正直これは大傑作だと思った。オススメですヨ。まず、弾の数がハンパない。車を盾にしての銃撃戦というこの王道演出は、もうアクションファンならしびれまくり間違いなし。凶悪集団を相手にたった5人だけで立ち向かうってところが漢。ピンチなシーンで、シュワがバンに乗って登場するシーンのかっこよさといったら、もう正直僕はちょいと泣きましたよ。これだけ胸のすくアクションで、僕らのアイドル、かっこいいシュワが戻ってきて本当に嬉しい。
これはもう目覚ましい復活。まさに「完全復活」だ。これは大げさなキャッチコピーなどではない。
『ラストスタンド』は、4月27日(土)より全国ロードショー。『コマンドー』日本語吹替完全版コレクターズBOXは10000セット限定で4月18日発売。