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有森也実、デビュー作で共演した神田裕司を祝福

新宿K's cinemaで『TOKYOてやんでぃ』が公開中である。落語を原案としたコメディ映画だが、ぱっと見、小さい映画かと思いきや、小松政夫も安達祐実も出ていて、そのラインナップは思いのほかの豪華キャスト。”笑って泣ける映画”と評判である。初日の聞き込み調査によって決められるぴあの満足度ランキングでも1位になった。「予想以上に笑える」、「落語の初心者でもわかる」と評価は高い。

3月11日、この映画について、神田裕司監督によるトークショーが行われた。神田監督は本作が監督デビュー作品になる。「取材に来てくれて、ありがとうございます!」と、珍しく監督直々に我々マスコミにも挨拶に来てくれて、山田洋次監督に対抗意識を見せるなど、とてもバイタリティに溢れる人だった。

トークショーのゲストに招かれたのは、小中和哉監督と、有森也実だった。有森也実はこの映画には出ていないし、小中和哉監督も関わりがない。ではなぜこの2人がゲストなのかというと、神田監督にとってこの2人は映画人生においてとても大きな存在になった2人だったからである。

神田監督は以前は俳優をやっていて、今から27年前に小中和哉監督の『星空の向こうの国』に主演して成功を掴んだ。このときの相手役が、これがデビュー作となった有森也実である。同作は絶賛されて、神田監督はその後映画を製作する世界に入っていき、有森さんはスペースクラフトを代表するトップ女優になった。有森さんにとっても小中監督、神田監督との出会いが女優人生の大きな出発点になったと言っても過言ではない。神田監督はその後も自分でどうしても映画を撮りたくて、ついに念願のデビュー作『TOKYOてやんでぃ』を完成させた。この3人が、神田監督の晴れ舞台で、こうしてまた昭和時代の仲間たちと一緒に同席して座っている。『星空の向こうの国』を見ていた人にとっては、もうそれだけでも嬉しくなってくるだろう。この友情、泣かせる! 実に粋な計らいである。

しかし神田監督と小中監督は、一眼レフカメラの話など、結構技術的なマニアックな分野のトークの世界に入ってしまって、お客さんも半分はちんぷんかんぷん。小中監督が専門分野をわかりやすく通訳してお客さんに説明していた。

有森さんは、直前の上映を客席で鑑賞してからトークショーに出席。神田監督は今も舞台で「也実ちゃん」と呼んでいたが、有森さんは「もう也実ちゃんって呼ばれるような年齢じゃないんですけど」と苦笑い。「私も試写会に呼んでくれれば良かったのに。水臭いじゃないですか!」と有森さんが言うと、神田監督は「あれ? 呼んでなかったっけ? ごめんね、也実ちゃん。でも、まさかこうして3人が一緒にこうして会えるなんてね〜」と嬉しそうだ。

有森さんは、小中監督の演出方法については、「全部絵コンテに書いてくれるから全部絵コンテの通りに演技しなければいけなくて、小中監督も結構やりづらかったんですよ」と、いたずらぽく語っていた。「今『たとえば檸檬』という映画をやっていまして、そのプロモーションで地方を回ってました。次は横浜でやると思うんでチェックしててください」と出演作についてもPRしていた。

トークショーの途中では、大声で「終電あるから、ごめんねぇ!」と言って出て行った年配のお客さんもいたが、有森さんは「は〜い」と愛想よく返事していた。

フォトセッションでは、神田監督が「こういうのは女性が真ん中に来るものなの!」といっても、有森さんが「いいや、監督がぜひ真ん中で」と言って、2人がお互いに場所を譲り合う一幕もあった。イベントが終わっても、ロビーでポスターを見ていたら有森さんが出てきて、気さくにお客さんと会話したりサインしたりしていた。

客席には金原亭世之介(出演兼落語監修)、森末慎二の姿もあって、そのことからも本作が落語業界からかなり注目を集めていることがわかる。神田監督は「シリーズ50本作ろうと思っている」とデビュー作だけでは飽き足らず、志は大きかった。

2013年3月12日 02時46分

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