ザ・ドリフターズ リスペクトライブにドリフ本人が登場
9月17日(月・祝)、上野にて、ザ・ドリフターズのリスペクトライブが行われ、5組のロック・バンドと1組のお笑い芸人がドリフにまつわるライブパフォーマンスを披露した。イベントの最後にはザ・ドリフターズのメンバーがサプライズで登場。加藤茶、高木ブー、仲本工事の3名を讃えて、会場からは割れんばかりの拍手が送られていた。
日本のお笑いの発祥の地・台東区で、もっとお笑いの世界を盛り上げて、台東区を活性化していこうじゃないかというノリで毎年行われている「したまちコメディ映画祭 in 台東」のクロージングイベントとして企画されたもの。毎年お笑いの神様1組に栄誉賞を授与しており、今年同賞に選ばれたのがドリフ。
ドリフは、コント以前にバンドとしてよく知られている。そこで、総合プロデューサーのいとうせいこうが、ドリフが好きで好きでたまらないというロック・バンドを集めて、夏のロック・フェスさながら野外ステージで盛り上がろうじゃないかと呼びかけた。集まったロック・バンド(ユニット含む)は、浅草ジンタ、OKAMOTO'S、怒髪天、ホフディラン、レキシの5組。そこに司会役であるお笑い芸人のポカスカジャンが加わり、6組のバンドそれぞれが30分ずつ代表曲を披露した。それはあまりにも濃縮された30分の連続であった。
浅草ジンタは、その名前になる前から浅草で活動を続け、その名前になってから浅草を代表するロック・バンドになった。まあまずは台東区の地元の人にお手本を見せてもらおうやという趣旨だが、ブラスサウンドとサックスがかなり賑やか。いきなり1曲目からすごい盛り上がりだ。そしてダブルベースソロがかなりかっこいい。メンバーが「みんな前に出てきて!」と2度も呼びかけたので、最初は遠慮がちだった観客も、最後にはもうみんな総立ちになってステージ目前まで詰めかけ、みんなで拳をつきあげて踊りまくっていた。彼らはドリフのリスペクトとして「ゴー・ウエスト」を歌った。
続いて司会のポカスカジャンが登場。演奏しながら笑いを取る芸で人気のトリオである。「芸人を代表して来ましたが、2番手でもう出ちゃっていいのかな」といいながらも、長渕剛のものまねでドラえもんの絵描き歌を披露し、描いてみたらコロ助の絵になっていて「ドラえもんじゃねえ〜!(ろくなもんじゃねえ〜の替え歌)」と叫ぶ十八番ネタを披露。この他、トリオにこだわって、アルフィーや最近活動を再開したTM NETWORKの物まねと替え歌で笑わせてくれた。また、ドリフのリスペクトとして「全員集合」メドレーをインド楽器で披露した。
OKAMOTO'Sは、岡本太郎好きが集まったバンド(アンプの上には太陽の塔の模型が置いてあった)。ラモーンズみたいに全員がオカモト姓を名乗っているが、みんな個性がまったくバラバラ。しかし音楽は完璧にひとつになっている。バリバリのロックサウンドで、会場も一気に熱くなった。ここは町の真ん中の小さな野外ステージ。基本クラシック以外は原則として禁止されているこのステージで、これだけのボリューム。すぐに近所からうるさいという苦情が届いたという。
この熱気のまま休憩時間に突入。そのまま観客がステージのすぐ前を陣取っていたが、スタッフがステージの前に近づくのを禁止したので、観客はかなりブーイングだった。そんな中で怒髪天が登場。おっちゃんバンドかと思ったら、いきなりパワフルなパフォーマンスで、これまた熱くなった。「近所から苦情が来てるんだってよ。だったらより激しくやってやろうじゃないの」とかなりノリノリだ。ボーカルの増子直純はドリフの法被を着て「今までドリフよりも面白いものを見たことがない」とコメントしていた。
ホフディランは、これまでのとは一転して爽やかなサウンド。ワタナベイビーは「僕は台東区在住なのに、今まで一度もこの映画祭に誘われなかった。いとうせいこうさんにそれを訊いたら”君たちの出番は一番良いときのために取っておいたんだ。今回がそのときだ”と言われました。こうしてやっとこの映画祭に出場できました。来年もまた呼んでください」とコメントしていた。名曲『欲望』を披露すると、司会のポカスカジャンも「やばい。この曲は俺たちがいつもカラオケに行くときに歌っている。本当に良い曲」とかなり興奮していた。
陽が沈んだころに登場したのはレキシ。独特のユーモアを加味したMCと、ハイレベルなファンキーサウンドで、圧倒的な存在感だった。なんといっても池田貴史のカリスマ性がただもんじゃない。いとうせいこうも「足軽先生」としてバンドに参加してラップを披露。制御されていた観客も我慢できず、またステージに押し寄せてスタッフももはや制御不能。この日一番の盛り上がりを見せた。
6組すべてのライブを終えると、いとうせいこうは「うまくいった」とイベントに確かな手応えを感じていた様子。「本当に面白かった! 台東区。こんなに面白いところは他にないです。みんな台東区に越してきてください」と話していた。
最後の最後に登場したのは、ザ・ドリフターズ。これまでの6組のライブで十分チケット代のもとは取り戻しているはずだが、さらにサプライズでドリフまでお目にかかれるとは。観客もドリフの登場に大歓声をあげ、スタンディングオベーションで迎えた。
したまちコメディ映画祭では今年ドリフの映画(荒井注が在籍していた当時の作品)が3本上映された。加藤茶が「昔撮った映画が今も評価されるのは嬉しい。この映画を撮っていた頃は本当に忙しかった。今は暇ですが」とコメントして笑いを誘うと、高木ブーも「このときは忙しかったけど、僕は寝てました。映画の撮影中に寝てて監督によく怒られました」とジョークを交えて挨拶した。仲本工事はいかりや長介に代わって「オイッス」と呼びかけ、「こっちの方は声が小さいぞ」といかりや長介さながら笑わせてくれた。仲本は『全員集合』時代は体操ネタで活躍していたが、退場時には華麗に側転して観客を驚かせた。3人ともほんの短い挨拶ながらも笑いのエンターテイナーとして、見せるところではちゃんと見せてくれていた。(澤田英繁)