映画館ではみんな笑いたいときには思い切り笑おう
7月23日(土)、実写映画『忍たま乱太郎』が公開初日を迎え、出演者の加藤清史郎(9)、林遼威(10)、木村風太(10)、寺島進(47)、三浦貴大(25)、杏(25)、石垣佑磨(28)、松方弘樹(69)、三池崇史監督(50)が舞台挨拶に立った。これを祝して”なでしこジャパン”の安藤梢選手(29)がかけつけた。
アニメ『忍たま乱太郎』は1993年にNHKで放送を開始。18年の歴史のある長寿番組が満を持して実写映画化された。監督は『妖怪大戦争』、『ヤッターマン』の三池崇史。光GENJIから現在のNYCに至るまで18年続いているテーマ曲「勇気100%」は実写映画でも健在で、この曲がさらに作品をパワーアップさせている。
この日は、上映開始前から「勇気100%」が繰り返しガンガンかかっていて、この曲のお陰で会場の子供たちもいやが上にも熱く盛り上がっていた。
お茶の間では見ない日はないほど人気がある加藤清史郎だが、意外にもこれは初の映画主演作になる。PRもかねて甲子園の始球式を務めるなど、今日まで多忙な日々を送っていたが、本人はまったく疲れ知らず。舞台挨拶の旅はこの日から始まったばかり。この日も「映画からは感じないかもしれないんですけど、『忍たま』の撮影のときから僕の身長が5センチ伸びてます」と挨拶して会場を和ませていた。
舞台挨拶は新宿バルト9で行われたが、この場所には林遼威は特別な思いがあったようだ。「僕は今ここに立っていることがいてもたってもいられないくらい嬉しいんです。なぜなら僕はほとんどの映画をここ新宿バルト9で見ていて、ここに立っていることが夢みたいです。本当にありがとうございます」と大人顔負けのコメントをしていた。
木村風太は、挨拶をするときに両隣の二人から同時にマイクを手渡され、どっちのマイクを取ったらいいのかわからずどぎまぎしていたところが微笑ましかった。「1年前の今頃、暑い中撮影していた。お腹に布団を三枚入れてるんですけど、真夏の京都なので本当に暑くて背中にずっと汗もができて。2キロ痩せました」と挨拶していたが、何度もお辞儀して、9歳とは思えないほど礼儀正しい子だった。
寺島進は、「言いたいことはみんな3人が言ってくれた。『忍たま乱太郎』がヒットして時代劇が活性化すればと思います。今は隣に杏ちゃんがいてドキドキウキウキしてもう何も言えません」とお茶目なトークで沸かせた。寺島は映画の中では先生役だが、「俺が先生役をやると、だいたい子供が俺にひっぱたかれて、子供がお母さんに言いつけて、そのお母さんがPTAで教育委員会にかけられるような役どころが多いんですけど、今回の先生役についてはバッチリでした」と嬉しそうだ。「俺は精神年齢が8歳なんで子供たちと話も合ったし、自分で言うのもなんですけど、結構俺って優しいなと思って。楽しかったですよ」と振り返っていた。
本作の大きな見どころは、その特殊メイクである。まるでアニメのキャラクターがそのまま実写になって出て来たかのようなビジュアルが注目されている。その中でも極めつけは八方斎役の松方弘樹。もはやそのキャラクターが松方弘樹とはわからないほど別人になっている。松方は「ここだけしか自分が残ってません」と顔の一部を指差して説明しつつ、「僕は特殊メイクで3時間かかってます。思ったほど重くはないです。よく見ないと絶対わかんない俳優さんがたっくさんいますから」と話していた。子供たちが主演なので、子供が撮影に打ち込める夏休みを使っての撮影だったのでとにかく暑かったとのことだが、ましてやこの特殊メイク。大変だっただろう。
くの一教室の山本シナ先生を演じる杏は中村玉緒と二人で一役を分かち合った。杏は「できあがったものを見て山本シナの効果音にびっくりしたので、効果音に注目していただければなと思います」とコメント。ビジュアルでもサウンドでも笑いの要素満載の本作だが、杏は「映画館って静かにしなきゃいけないっていいますが、笑い声だけは別だと思います。試写室でもあんなにみんな声出して笑ったことは初めてだったので、今日もみんなでワハハと笑って楽しく過ごしてください」と映画を楽しむコツを伝授してくれた。
子役3人を演出した三池監督は、若さへの渇望か、「3人はこれからどんどんいい男になっていくわけでしょ。俺はどんどんただのおっさんになっていく。そのギャップがちょっと悔しいな」と文字通りの「オトナのコメント」で笑いを誘っていた。
本作のテーマは「ガッツと勇気」そして「諦めないこと」。このテーマは先日のサッカー女子ワールドカップの優勝にも通じている。持ち前のガッツで強大な敵を次々と制し、ついには優勝して日本中に勇気と感動を与えた”なでしこジャパン”。最後まで諦めないことの大切さを教えてくれた安藤梢選手が応援にかけつけると会場がどよめいた。安藤選手がとびきり大きな花束を清史郎にプレゼントすると、清史郎は花束のあまりの重たさによろめいていた。
最後にまとめの挨拶を一任された清史郎は、「隣の人を気にせずに、恥ずかしがらずに笑いたいときは思い切り笑ってください。僕もこの映画で金メダルを取りたいと思います」と力を込め、大物ぶりを見せてくれた。
本作は、台湾、インドネシア、タイなど、70ヶ国で公開が決定しており、ビジュアルとサウンドの面白さが万国共通であることを示している。杏も言っていたが、声に出して笑うこと、これは当たり前のことだけれど、こうして言われてみると、この本質を我々は忘れているような気がする。家で一人で映画を見るよりも映画館で見た方が断然楽しいし、みんなで笑って楽しめること、それが映画館の良いところなのだと改めて気づかされる作品である。
『忍たま乱太郎』は新宿バルト9ほかで全国ロードショー中。(文・澤田英繁)