今の日本に求められるもの『聯合艦隊司令長官 山本五十六』
7月18日(月)ホテルニューオータニ、芙蓉の間にて、12月23日公開の『聯合(れんごう)艦隊司令長官 山本五十六』のクランク・アップ記者会見が行われ、キャストの、役所広司(55)、玉木宏(31)、柄本明(62)、柳葉敏郎(50)、吉田栄作(42)、椎名桔平(47)、五十嵐隼士(24)、伊武雅刀(62)、中村育二(57)、宮本信子(66)、原田美枝子(52)、瀬戸朝香(34)、田中麗奈(31)、香川照之(45)、そして、成島出監督(50)が登壇した。
真珠湾攻撃を指揮し、太平洋戦争における日本を代表する提督として世界的に知られている大日本帝国海軍の軍人の名前を映画のタイトルとした『聯合艦隊司令長官 山本五十六』は、23社が出資する年末商戦大型映画として300館を超える拡大ロードショーを予定している。
スティーヴン・スピルバーグは『ジュラシック・パーク』を作って度肝を抜いた年に『シンドラーのリスト』を作ってさらに度肝を抜いた。クリント・イーストウッドは『チェンジリング』を作って度肝を抜いた年に『グラン・トリノ』を作ってさらに度肝を抜いた。成島監督は『八日目の蝉』を作って度肝を抜いた年に『聯合艦隊司令長官 山本五十六』を作ることになるわけだが、これは完成に期待がかかる。
日独伊三国軍事同盟に反対していた山本五十六が、なぜ自ら日米戦の火ぶたを切って落とさなければならなかったのか。本作で描かれているテーマはリーダーシップである。現代の日本には、山本五十六のようなリーダー像が求められている。
これを映画にするにあたり、映画会社側は勝手に役所広司を主演として企画を進めていたという。結果的に役所広司は出演を快諾し、当初狙っていた通りの豪華キャストが集結した。作品にはこの日の会見に登壇した俳優のほかに、阿部寛、坂東三津五郎、益岡徹、袴田吉彦らも出演している。
役所広司は、開口一番、「なでしこジャパンを、僕も一睡もせずに応援していました。お疲れでしょうけれでもしばらくおつきあいください」と女子W杯の優勝にからめて挨拶。まだ興奮覚めやらぬと言う感じで、質問のたびにサッカーに触れつつ答えていたが、後半になってあるテレビリポーターが「役所さん、今朝のなでしこジャパンを見てどう思いましたか?」と、今までのスピーチを何も聞いていなかったような質問をして、「さっきから再三そのことで話してるんですけどね」と役所を苦笑いさせる一幕があった。映画の会見なのに、奇しくも女子W杯と同日開催となったために、なでしこジャパンに話題の半分をのっとられた形になってしまった。
この映画では、題材として「戦争」と「マスメディア」が描かれている。記者会見の前にも、開戦を伝えるその当時のニュースフィルムが上映され、マスメディアの重要性が示された。歴史の背景にはこのように必ずマスメディアがある。その側面を担うのが、東京日報記者を演じる玉木宏である。玉木は「世に対して真実を伝えなければいけないという使命感。その思いで演じました」と感慨深げに語っていた。
また、国民を煽るためには事実と異なる報道もいとわない東京日報主幹を演じた香川照之は、「なんでもマスメディアの描き方ひとつで変わってしまうというか、煽動する力がある」と語った後、しばらく間を置いて「この質問を逆に返せば、この映画も皆さんの心積もりひとつでどうにでもなるという。どうか、よろしくお願いします」とユーモアを交えて語り、記者陣を沸かせていた。
この日は、女子高校の生徒たちが総合学習の一環として会見に出席。まだ16・7かという若い生徒が初々しい声で「戦争を知らない私たちに、この映画をどのように受け取って欲しいですか?」と質問していたが、役所はにっこり笑顔で生徒の顔を見つめて「僕も戦争を知らない子ですけれども、とにかくやっぱり自分たちの国を守るためにこれだけの人が本当に命をかけて戦ったことは事実ですので、どうしてそういう風になってしまったのかを感じてもらえればと思います」と語っていた。(文・澤田英繁)
この日、登壇者たちは皆劇中衣装を着ていたが、会見中もまるで役そのもの。1/2スケールの戦艦も登場してムードたっぷりだった。せっかくなので、映画のワンシーンみたいに登場人物紹介をしてみた。映画の重厚な雰囲気が伝われば幸いである。
※吉田栄作の演じる三宅義勇役は三和義勇をモデルとした架空の人物である。
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