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叶井俊太郎の過激な業界裏話。映画業界ってヤクザな世界なんだなあ

某日、都内某所で行われた『ムカデ人間』(公開中)のトークイベントに行ってきたよ。『ムカデ人間』は3人の人間をつなげてみる見世物小屋的ホラー映画。去年4億3千万の負債を抱えて破産した叶井俊太郎プロデューサーが再起をかけて買い付けた作品である。

このトークショーのゲストのまたマニアックなこと。吉田味庵、河崎実、中野ダンキチ、小滝かれん、そして叶井俊太郎。説明なしじゃわからないと思うので、一人ずつ説明する。

吉田味庵(30)。ジャンクハンター吉田と言った方がしっくりくる。なぜ名前を変えたのかは不明。はっきり言って職業もよくわからない。会社も経営してるらしいが、映画のコラムを書いたり宣伝もやってる。つまり、なんでもする人。一言でいえば「業界人」。ある意味ここまでバカじゃなければこの業界やっていけないという見本(褒め言葉)。僕がこれまで取材した舞台挨拶の中でもベストバウトといえる舞台挨拶は『ハード・リベンジ、ミリー ブラッディバトル』だが、このMCを務めていた人は実はこの人だ。

河崎実(52)。日本で『日本沈没』がヒットしていたころ、『日本以外全部沈没』という映画を作った「便乗監督」。これまでに様々な映画に便乗し、カルト的な人気を誇る。現在大ヒット中の『SUPER 8/スーパーエイト』に便乗して『SINGLE 8/シングルエイト』を作ろうかなと毎日企画のアイデアをひねり出すのに余念が無い。

中野ダンキチ(38)。水野晴郎のブレインを引き継ぐ映画評論家。いわゆるF級映画(本人はZ級映画と呼称)に強いこだわりを持っている。

小滝かれん(23)。サブカルチャーにも詳しいグラビアアイドル。彼女がいなければヤローだけの集会になってしまい、客が誰も来なかっただろう。どんなイベントにもおネエちゃんは不可欠なのである。

叶井俊太郎(43)。このイベントの主役。業界では名物にもなっている有名人で、エログロ映画『ネクロマンティック』など、これまでに手がけた映画はあげればきりがない。トルネード・フィルムを設立するが、去年4月に破産。その後も映画業界から離れられず細々とフリーでやっていたようだが、一念発起してトランスフォーマーに入社(条件付きの入社で、倉田真由美と離婚したらクビだという)して初めて手がけたこの『ムカデ人間』である。果たしてその健在ぶりをアピールできるか。


叶井俊太郎。僕はこの人とは試写室で隣に座ったことがあるくらいで面識はなきに等しいけれど、なんだか全然他人の気がしないんだよね。というのも、以前僕が「SPA!」の映画コーナーを受け持っていたことが何年かあって、ちょうどそのとき同じコーナーの横枠を叶井プロデューサーが書いていて、映画のネタがかぶって書き直しとかよくあったのを覚えている。しょっちゅうトルネード・フィルムから試写状が届いたけど、毎回タイトルを見るにつけ「お。やっとるわい」と思ったものである。『日本以外全部沈没』の試写状が届いたときにはさすがに僕も吹いた。とまあ妙に愛着を感じている人なので、これはぜひ取材しようと思ったわけです。

ところがこの取材、ノンアルコールカクテルなのに(叶井プロデューサーは下戸である)、みんなすっかり回ってしまっていて、一昨年麻薬問題を起こした元アイドルの病んだ過去の話だとか、某ハリウッドスターのご機嫌取りにやった法律スレスレの危ないこととか、誰々と誰々が付き合っていたこととか、どこどこの映画会社の社長が夜逃げして消えたこととか、さらには前妻との裁判ネタまで、トークの内容がどれも過激すぎてとても掲載できるものではない。ウチを入れて3社しかマスコミが入ってなかったのに、叶井プロデューサーは何度も「タブーだから書いちゃダメだよ」と念を押していたのでうかつに書けない。要するに映画業界はヤクザな世界だってことがわかるトークショーだった。


3時間くらいのトークショーだったが、その中でもなんとか掲載できそうな4つのエピソードについて書かせてもらう。

(1)『ムカデ人間』の公開映画館

映画をどこで公開するか、これはかなり重要な話だという。『ムカデ人間』はホラー映画である。ホラー映画といったら渋谷のシアターNで公開するのが業界でお決まりのパターンであるが、「シアターNで公開すると、多くの中の一本になって埋もれてしまう。そこでホラー映画をあまり公開しないパルコ(渋谷シネクイント)で上映してもらえば意外性があると思った。チラシの絵だけを見ると一瞬オシャレな映画かと勘違いするし」と叶井プロデューサー。「1日に1・2枚は前売り売れてるんじゃないの」と言うとみんな笑っていたが、「結構1日に2枚売れることはないんですよ」と、それが良い方であることを教えてくれた。

(2)『超立体映画 ゾンビ3D』の失敗

叶井プロデューサーが過去手がけた作品で『超立体映画 ゾンビ3D』という映画がある。3Dの映画だが、『アバター』みたいなデジタル3Dではなく、赤と青のセロハンのメガネで見るアナログ3Dの映画だ。アナログなので当然モノクロだし立体感も乏しい。「1500万円で買って、東宝系で全国50館でやってこいつは当たると思っていたら、メガネは別になっていて、メガネ代が300万円、輸送費が100万円かかってしまった」。興行収入は1500万円程度。純利益は600万円。ひどい赤字である。この映画、ネットなどの口コミレビューも「史上最低」とすごいけなされようで、ここまでひどいと逆に興味が沸くのだが。それでも仕事だから次々と映画を買っては宣伝していかなきゃならない。

(3)『アメリ』の成功

「次で5億いくんじゃないか。単館で『アメリ』は16億円行ったから、第二の『アメリ』になるんじゃないかと期待するんですよ。次こそはと思うけどどれも当たらない。でもすべて当たるもんだと思ってやってますよ」と叶井プロデューサーは語る。『アメリ』で成功している過去があるから頑張れるわけで。「『アメリ』はあらすじだけで買ってる。『エイリアン4』の監督だし、映像はないから、”アメリが水になって飛び出す”、”アヒルやブタが動き出す”と書いてあるのを見て、ストーカー気味の女の子のホラー映画だと思ったら全然違う映画だった。だから勘違いはジンクスなんです。勘違いすると、成功すると思う」とのことだが、『ムカデ人間』も怪獣映画と思って買ってみたら違っていたというから、これも当たるかも?

(4)600人の女とヤったこと

叶井プロデューサーが600人の女とヤったこと。これはあまりにも有名な話だが、このことについてもトークショーで触れていた。「別にナンパして600人とやったわけでもなく、島にいたら自然とそういう関係になった。だからヤりたければ島に行けってことです」とのことだが、ジャンクハンター吉田は「叶井さんにナンパされた女性に会ったことがある。やらなかったんだって。だからやらない人の方が多くて、叶井さんはネットで叩かれてるけど、誤解だよね。下半身は叶井さんにとっては挨拶。叩いている人は単に嫉妬してるだけだと思うよ」と話していた。

『ムカデ人間』、「これが成功しなかったら切腹しろ」と言われたが、叶井プロデューサーは「これがどうなるか見届けるまでは死ねない」と語っている。「次こそは当たると思ったのに全然当たらない」と嘆くところに人として妙に親近感を覚える。僕もこのサイトのページビューが思うようにのびずに悩んでいるけど、みんな同じような悩みを持っているもんだ。多額の借金を抱えて破産しても、それでもこの映画業界を自分の拠り所としてひたすら仕事を続けているその姿を見ていると、応援せずにはいられない。(文・澤田英繁)

2011年7月3日 23時57分

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