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竹野内豊が苦楽を共にした仲間たちとの再会に感涙

2月11日(金)有楽町にて、『太平洋の奇跡 -フォックスと呼ばれた男-』の初日舞台挨拶が行われ、竹野内豊(40)、井上真央(24)、山田孝之(27)、中嶋朋子(39)、岡田義徳(33)、阿部サダヲ(40)、唐沢寿明(47)、平山秀幸監督(60)、チェリン・グラック監督(52)が登壇した。

『太平洋の奇跡』は、1944年太平洋戦争末期、たった47人になりながらも16ヶ月もの間、米軍に立ち向かっていった兵士たちの姿を描いた真実の物語。終戦後、この事実について、日本では語られることがなかったが、米軍は「敵ながら天晴」とこの部隊を賞讃。日本にもこの事実を知ってもらいたいと、米国人の手によって1982年に原作が書かれた。映画化にあたって、日米それぞれ一流のキャスト陣が集結。監督は日本人パートを『必死剣鳥刺し』の平山秀幸、米国人パートを『サイドウェイズ』のチェリン・グラックにあえて分担させる手法が取られた。海外マーケットでは絶賛され、イギリス、アイルランド、ドイツ、オーストリア、スイスではすでに配給が決定している。なかでもイギリスでは10社以上が配給権を争ったというほど。日本ではこの日公開されるや中年・高齢者層の客層が集まり、満員御礼の大ヒットスタートを切った。配給の東宝の話では興収20億円を見込めるという。

これだけの戦争映画。舞台挨拶もさぞや厳粛なものかと思えば大間違い。まず第一声、司会者が竹野内豊の名前を呼ぶと、やおら唐沢寿明が「俺が竹野内だ」と言わんばかりに我が物顔で一歩前へ出て会場は大爆笑。始まって早々から笑いの絶えない愉快な舞台挨拶になった。

山田孝之は「朝から、某ボクシング映画もあるのに、こちらに来ていただいてありがとうございます(会場笑)」と挨拶。客席から「山田くーん!」という声援を受けると「山田です。ええ(会場笑)」と不器用に返事し、「雪がわーわー降る中(会場笑)、映画を見て、色々考えられている状態で、こんなに皆が出て来て、もうわけわからないですよね(会場笑)」とコメント。恥ずかしそうに話す様を見て若い女性ファンも喜んでいた。

阿部サダヲは山田よりも更に輪をかけて照れているのか、かなり噛みながら「あんなに焼け野原だったのに、外に出てみたら銀座がすごく良いところになってて、幸せを噛み締めています。雪も降っているので早めに帰った方が良いですよ」と話していた。

グラック監督は、「この第二次世界大戦、日本とアメリカは一回ケンカしてんだなということを知っていただきたい。歴史というのは今は仲良しということで続いていますので」と挨拶。実は日本語がペラペラで、「今日は字幕が出ないということで日本語で話させていただきます」とジョークを言う余裕もあった。

ようやく唐沢寿明にマイクが回って来ると「いやー、ほんとお待たせしました。ははは。みんなあれから変わったね。阿部くん太りましたね。岡田くんはアメ横の中田商店の店長みたいになった。チェリン・グラック監督はポロ・ラルフ・ローレンの店長みたいで、女優陣は今も変わらず本当にお綺麗で」とノリノリでリーダーシップを発揮。ここで司会者に「一番変わったのは唐沢寿明さんの髪型ですね」と言われたところから、唐沢と司会の漫談コンビが成立し、唐沢はことある度にこの司会者をいじって観客を大いに笑わせてくれた。

タイトルにちなみ、登壇者それぞれに「奇跡」にまつわるエピソードか、あるいは「何々と呼ばれた男」についてのエピソードを語ってもらうことになると、先陣を切って挙手した竹野内は、「井上真央ちゃんが虫を食べたこと、これは奇跡です」と「奇跡」エピソードを披露した。井上は「あれは虫を食べたんじゃなくて、虫を食べさせられたんです!」と反論して「唐沢さんと竹野内さんが屋台に連れて行ってくれて、唐沢さんが、すっごいキラキラしたお目目で虫を差し出してきて、”おいしいよ”って言ったんです」と話すと、唐沢は「袋に入った奴でね。カエルとかコオロギとかあるんです。あんなの食べらんないよね」とあきれ顔。井上は「この瞳にやられて食べてしまいました。唐沢さんは食べてません」と悔しがっていたが、「味は油の味で、意外とカリッと芳ばしい味でした」と案外味は悪くなかった様子だった。

井上は、「奇跡」のエピソードについて「今年の新年会のジャンケン大会で優勝したことです」とコメント。「100人くらいいる中で優勝したんです。お金をみんなで出しあって、勝った人が取っていくんですけど、私が総取りしました」と嬉しそうに話していた。司会者が「井上さん、卯年ですから、どんどんジャンプアップしていく年ですもんね」と気を利かすと、すかさず唐沢が「僕も卯年なんですよ。それだけを言っておこうと思って。君に」と司会者にまたツッコミ。「ほら。話はどんどん転がしていかないと。わかるでしょ」とまくしたてて会場を沸かせていた。

阿部は、唐沢と司会のそんなやりとりを見て「本当、言葉って難しいですね。言葉のすれ違いで戦争とか起きちゃうんで、気をつけた方がいいですよ」とコメント。「何々と呼ばれた男」のエピソードについて「昔、小学生、中学生のときにちょっと太ってて、グリコ・森永事件というのが起こって、僕、”キツネ目の男”(事件の容疑者)と言われてました」と悲しい思い出話を披露して笑いを誘っていた。

唐沢は「こいつ(阿部)の後やりづらいんだけど。漫談コーナーじゃないんだから、やめようよ」とここでも自分のペース。「あのね、お客さん、奇跡なんてないんだから、ありえないことが奇跡なんだら、パンツ脱いだら子供が2・3人ぶらさがっていたとか(会場笑)、そういうのが奇跡だよ」とまた司会者をいじっていた。「何々と呼ばれた男」のエピソードについては「綿棒に間違えられたことあるね。先が小さいんで」と半ば自虐的な作り話を披露していた。

舞台がしっちゃかめっちゃかになったところで、中嶋は「奇跡」のエピソードについて「雪が降る寒い中、これだけ大勢の方に来ていただいたことが奇跡」とうまくまとめ、客席からは「おお!」「うまい!」と大拍手が沸き起こっていた。

最後に、兵士47人を演じた役者のうち、2ヶ月にわたるタイロケで苦楽を共にした兵士役たちが劇場後方から軍歌を歌いながら行進して登場。これを知らされていなかった竹野内はびっくり。彼らが竹野内に敬礼すると、竹野内は「うむ」とうなずき、その顔はすっかり映画の中の”フォックスと呼ばれた男”になっていた。

竹野内は、「一人一人に部屋が与えられているわけじゃなくて、ひと部屋に二人だったんです。中にはクーラーがきかなくて、窓を開ければ蚊が入ってきてとてもじゃなくて寝られないので。暑くて外に出れば野犬がたくさんいるので犬に噛まれる人もいて、本当に大変な2ヶ月でした。本当に彼らがいなければ撮影できなかった作品だと思っていますので、彼らには頭が上がらない思いでいっぱいです」と仲間を称えた。

「かつて血で争った両国のなみなみならぬ思いを二時間の映画の中で映し出すことは到底できることじゃないと思います。ですが僕がこの作品を一人でも多くの方にご覧いただいて、戦争のことを考えて、伝えていくきっかけになればと思います。”尊ぶ”という言葉を忘れないでいただきたいと思います」と語ると、竹野内は涙をこらえるように唇を噛み締めた。(文・写真:澤田英繁)

『太平洋の奇跡 -フォックスと呼ばれた男-』

兵士たち

2011年2月13日 03時24分

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