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でんでんの悪役ぶりはハンニバル・レクターに匹敵『冷たい熱帯魚』公開

1月29日(土)テアトル新宿にて、『冷たい熱帯魚』が公開初日を迎え、吹越満(45)、でんでん(61)、黒沢あすか(39)、神楽坂恵(29)、梶原ひかり(18)、渡辺哲(60)、園子温監督(49)が舞台挨拶に立った。

日本映画界に、またひとつ大胆不敵な映画が誕生した。これはホラー映画の一ジャンルであるが、過激な内容が各国の映画祭でも話題になった。何と言っても、このアクの強いキャスティングに注目せずにはいられない。出演者の名前を見ただけで漂うオーラ。皆それまでの役のイメージとはずいぶんと違って見事な「怪演」に挑戦し新機軸を打ち出した。園監督が「キャスティングが決まったところで90%勝利を確信した」と話していたのもうなずける内容だ。

吹越は以前ロボコップ演芸(検索すれば映像のひとつやふたつは見つかるだろう)という芸をやっていたものだが、それを見た後でこの映画を見ると、全然違っていてびっくりするだろう。吹越本人も「今までの自分だったら、まずありえない役ですから」と語っていた。この映画に出たきっかけは何とも奇妙な話であり、たまたま喫茶店で監督と出会ったことから出演することになったという。「ちょうどそのとき主人公を誰にしようかと考えていたときに吹越さんが入ってきたんです。これは運命だと思いました」と園監督。吹越は「二・三日現場に行くだけと思ったら主演だったんです。ああいう出会い方をしたらやるしかないかなと。断る理由がないですから」と語っていた。

容赦しない演出を求めたので、でんでんが神楽坂を犯すシーンでは体に青あざができたほどだという。舞台でも匂い立つような色気を放っていた神楽坂は、監督の猛特訓に耐え「ひと回り成長できた」と感無量だった。また、梶原は車のボンネットに叩きつけられるシーンの撮影で鼻血が出るハプニングもあった。吹越はこんな撮影現場を「人間はバランスを取ろうとする本能を持っているようで、内容が激しくなるほどみんなの顔が笑顔になって和気あいあいとしていた」と述懐している。次々とアイデアが生まれた現場でもあり、渡辺は「監督の頭の中をかちわって見たくなった」と監督のイマジネーションに感心しきりだった。

圧巻は、でんでんの悪役ぶりだろう。でんでんと言えば去年も話題作ばかりに立て続けに出ていて、気の優しいお父さん役として定番中の定番であるが、今回はイメチェンして悪役だ。それもただの悪役ではなく、園監督によって究極のモンスターが作り上げられた。宣伝スタッフはこれは『羊たちの沈黙』のハンニバル・レクター、『ダークナイト』のジョーカーに匹敵すると自信を見せている。

この日、筆者は映画館の前を歩いているでんでんさんを見かけたが、颯爽としていて、ダークなスーツがなんとも粋だった。舞台挨拶中も「初めての悪役で気持ちよかったです」と終始上機嫌で、「この役をやっていると、しばらくの間、何をやっても許されると錯覚しました。楽しい役でした。悪人役をもらってお礼を言ってるのも珍しいですが、これをやったから、しばらくは普通の優しい八百屋のおじさんをやっててもいいかなという感じですね」とトークもエスプリが利いていて実に好印象であった。

冷たい熱帯魚』は現在公開中。(取材・澤田英繁)

2011年1月31日 02時12分

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