『食べて、祈って、恋をして』最後の大物ハリウッド・スター、ジュリア・ロバーツがついに来日
「まだ日本に訪れていない最後の大物ハリウッド・スター」と言われていたジュリア・ロバーツ(42)が今月ついに『食べて、祈って、恋をして』のPRのため初来日を果たした。ジュリアは8月18日(水)に記者会見に出席、19日(木)に六本木ヒルズで行われたジャパンプレミアでファンと交流し、夫と共にしばらく西日本の観光を楽しんだ。
ハリウッドのトップ・スターともなると必ず一度は来日しているものだが、ジュリア・ロバーツはこれまでたくさんのヒット作に恵まれていながら、今まで一度も日本に来たことがなかった。「ジュリア・ロバーツは日本嫌い」と決め付ける人もいたが、このことについてはジュリアは否定しており、本人は行きたくなくて行かなかったわけではないようだ。このことばかりが取り沙汰されることから、プレミアのサウンドバイツでは、ある媒体に「そういうことを聞くのは日本人だけよ」と言ったとか。記者会見の席でも司会者から「今回初めて日本に来ようと思ったきっかけは何だったのですか?」という恐らく誰もが聞きたかった質問が代表して聞かれたが、ジュリアは「幸運の巡り合わせよ」とニッコリ。「東京の素晴らしい人々に触れて幸運を感じています」と挨拶した。『食べて、祈って、恋をして』の出来に本人が自信があっての来日との見解もあるが、その真偽は映画を実際に見て確かめたい。
記者会見では、通常の記者会見とは一風違った「ジュリア仕切り」の様相を呈し、トップスターのオーラを放っていたように思える。
ジュリアはプロデューサーのデデ・ガードナーと手をつないで壇上に上がると、一斉にカメラのフラッシュを浴びて、開口一番「フラッシュがすごくて怖いんですけど、これがおさまったら喋っていいのかしら」と一言。初来日とあって国内外からマスコミが殺到し、カメラ席は鮨詰め状態。そのフラッシュ量は大変なものだった。筆者が撮った写真の半数も他のカメラマンとフラッシュが被っていたくらいである。
以下、ジュリアの会見のハイライトである。
記者「ロケ地で一番印象に残ってるものは何ですか?」
ジュリア「食べ物で一番好きなのは何かとか、共演者で一番よかったのは誰かとか、一番のお気に入りは何かとかよく聞きたがるけど、私は何も選びません」
記者「インドでヒンズー教に影響を受けたと聞きましたが?」
ジュリア「今の時代はブログやツイッターなどで簡単に情報を発信できるけど、あるとき私と一緒に食事をしたライターが凝縮して記事を書いたので誤解させたようです。ヒンズー教については長い間勉強していますが、母が22年前に行った教えを守るべきでした。つまり、俳優は宗教の話をしないで演技すべきだという教えです」
記事「日本でやりたいことは何ですか?」
ジュリア「今まさにやってるこれです。夢にも見たこの場です」
記者「食べること、祈ること、愛すること、大切な順番に並べるとどういう順番になりますか?」
ジュリア「私にとって、それは全部同じことです。全部があって幸せになれます。間に読点はなく、私にとってこれは一続きの言葉です」
記者「変えたい生き方はありますか? またアドバイスをお願いします」
ジュリア「自分で変えたいものはありません。今の自分で十分です。アドバイスについては、人工的な変化をするのは賛成できません。口紅を変えたり、整形手術を受けるとかじゃなくて、自分の中を変えることがチェンジにつながると思います」
記者「ピープル誌で最も美しい人に選ばれていますが、その秘訣は?」
ジュリア「私の母がいっぱい投票したようです(会場笑)。美の秘訣は幸せでいること、あとはランコム(ジュリアがモデルを務めているブランド)のアイクリームもちょっと手伝ってるかな(会場笑)」
記者「『アバター』がヒットしていますが、役者がCGにとって変わられる日が来ると思いますか」
ジュリア「人間はとって変われるものがないほど大事なものです。それぞれユニークで、人間にはハートがあって、想像力があります。何か機械とか仕掛けにとって変わることはないと思います」
記者「仕事とプライベートをどのように両立させていますか?」
ジュリア「本当に色々とサポートがあって手助けが必要です。良いときもあれば悪いときもあります。両立させていく方法は普通の人と変わりません。ベストを尽くすということです」
記者「浮き沈みが激しい世の中で生き残ってきた秘訣は何ですか?」
ジュリア「秘密だから教えられません。組合から追い出されてしまうわ(会場笑)。多分やってることが大好きなんだと思うんです。大好きなことをやることが幸せだと思うんです。色々な国に行って仕事をして、この映画を通じて感じたのは、映画を製作するプロセスに自分がいて演技ができることを自分自身がとても愛しているということです。それが人生の喜びをもたらしてくれると思います」
印象的なのは、質問があるたびにジュリアが一言ジョークを交えて答えていたことである。『この映画がすごい!』という映画雑誌の記者が質問したときには「そんな名前の雑誌があるの!それに一番驚いたわ!」とコメント。プロデューサーのブラッド・ピットについて聞かれたときには「ブラッド・ピットって誰?」とおどけてみせた。
また、司会者が女性ばかりを当てていたので、「たまには男性にも質問させて」と指示したり、会場で写真を撮っている人を見つけて「今写真は撮っちゃダメでしょ。フェアじゃないでしょ」と説教する一幕も見られた。
「ラブ」という名前の女性記者から質問があったときには「私はコメディーもやってますけど、あなたの名前がラブと聞いて、てっきり姉の名前がイート(食べて)で妹の名前がプレイ(祈って)と言うのかと思ったわ」と豪快に大口を開けて笑っていた。
いよいよ最後の質問になったときは、ロイターの若い男性記者が英語で「この仕事を通して、アメリカ人の女性としてどういう発見がありましたか?」と質問したところ、ジュリアは「質問の意味がわからないわ。こんな質問で最後にするの? 困ったわ。理解できないから、もう一回やってみて。トライアゲイン!」と言って男性記者に何度も質問をやり直させ、ジュリアは頬杖をついて「質問の意味はわからないけど、あなたはとってもキュートだし、一生懸命質問してくれますね。多分あなたも私と一緒で時差ボケしてるのね。その質問はいつも的確な答えを出してくれるプロデューサーに任せることにするわ」とプロデューサーに振り、記者たちの笑いを誘った。
翌日のジャパンプレミアでは、ジュリアはある伝説を作った。それは舞台挨拶の「最短時間記録」である。六本木ヒルズアリーナはすっかり盆踊りムードに包まれ、会場に集まったファンもドレスコードにより皆浴衣でジュリアを出迎えた。猛暑の中、和太鼓を力強く鳴らして日本の心意気を見せようという筋書きだった。
しかしジュリアの登場は本当に短かった。ファンサービスも途中で切り上げて、ステージに上がると、ジュリアは「コンニチワ。今ここにいることが幸せです。みんなカメラを持ってきてくれてありがとう。このままみんなでカラオケに行きませんか?」とだけ挨拶し、すぐにステージを後にした。当然フォトセッションもなし。たった2分だったが、堂々たる大物スターの貫禄は十分に見せつけていただろう。
『食べて、祈って、恋をして』は、ソニー・ピクチャーズの配給で、9月17日(金)より、TOHOシネマズ有楽座ほか全国ロードショー。(文・澤田英繁)