ショートショート優秀賞、今年の日本映画は該当作品なし
6月21日(日)、明治神宮会館にて、ショートショート フィルムフェスティバル & アジアの授賞式が行われた。
たくさんの部門を有する同映画祭。今年はミュージックshortクリエイティブ部門のプレゼンターに檀れい(38)。旅シヨーット!プロジェクトの審査員に忽那汐里(17)、ストップ!温暖化部門の審査員に佐藤江梨子(28)、コンペティエン部門の審査員に桃井かおり(59)が参加。レッドカーペットには叶姉妹、佐津川愛美(21)らが招かれイベントに花を添えた。
最優秀作品に選ばれると米国アカデミー賞短編部門ノミネート選考対象に直結することから、映像の世界を目指すアマチュアにとっては大きなチャンスとなる場。情報は世界に向けて発信しており、毎年アジア・ヨーロッパなど世界中の映像作家たちが短編映画を出品している。今年も新部門を設置するなど、ますます活気づいてきており、授賞式には外国の映画監督、俳優たちが多く参加していた。客席には『ロード・オブ・ザ・リング』を作ったWetaワークショップのリチャード・テイラーの姿も見られ、世界的な注目度の高さがうかがえた。
今年のグランプリ受賞作品はオランダ映画の『ミュージアムとショコラ』(原題『Vera』)に決定した。セリフらしいセリフはなく、一人の孤独な女性がホームレスを助ける様子が物静かに描かれた10分の作品だ。審査員の桃井かおりは「女優の芝居をすごくよくわかってくれる監督と、女優を刺激してくれる監督がとてもいい仕事をした。一人の素敵な女優さんがストーリーをひっぱっていく俳優冥利につきる作品」と選出した理由を述べた。
インターナショナルアジア部門では、フィリピン映画の『ボンサイ』が受賞した。製作費10万円という低予算の作品が取り、映画はお金をかければいいというわけではないことを証明した。
ジャパン部門は「該当作品なし」となった。毎年同映画祭ではインターナショナル部門、アジアインターナショナル部門、ジャパン部門の3部門から優秀作品が選ばれることになっているはずだが、審査員は今年の日本映画の出品作品の質の低さを見て、協議の結果、インターナショナル部門、アジア部門と同等の賞を与えるには値しないと厳しい評価を下した。審査員の桃井は「短編には落ちがなくてもいいから、ヘタクソでもいいから、もっと勢いのあるものを見たかった。でもリベンジという言葉もある。ふざけんじゃねえという気持ちで次も頑張って欲しい」と厳しくも愛情のあるエールを送っていた。
同映画祭は世界に発信している映画祭だが、それでもやはり出品作は日本映画の比率が圧倒的に高い。審査員も日本人ばかりだ。新設部門に至っては日本映画しか入選作がないほどで、なかなか「日本の映画祭」というイメージが拭えないところである。そこに今年日本映画を該当作なしとしたことは英断だったと言えよう。日本の映画祭だからといって日本映画を特別扱いするのではなく、日本映画も外国映画も一本の短編映画として公平に見るのだという未来を見据えた映画祭審査員の本気度が伝わってくる決断であった。
桃井かおりもこの映画祭がきっかけになって映画監督になった一人だ。今年は同映画祭から14才の映画監督も誕生した。代表の別所哲也(44)はいつも「映画は長さではない」と語っている。映画を作る情熱は長編も短編も同じ。映画は誰にでも作る資格があるのだということをこの映画祭は教えてくれる。(文・澤田英繁)