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    『歩いても 歩いても』
    是枝裕和監督単独インタビュー

    1月23日(金)より『歩いても 歩いても』のDVDがバンダイビジュアルから発売&レンタル開始される。成人して家を離れた子供たちと、老いた両親の夏の一日を辿る家族劇で、各界から絶賛された作品である。発売を前に、監督の是枝裕和さんに話を聞いた。

    --阿部寛さんについて、演出していて凄いと思ったことは何ですか?

    阿部さんは非常に演技設計の繊細な表現のできる人でした。普段やってる役は起伏の激しい役とか、強く感情が表に出る役が多いけれども、こういう役もうまいんじゃないかなと思っていたら、想像以上でした。阿部さんは受けの芝居ができる人です。要するに、夏川さんも受けられるし、YOUさんも受けられるし、希林さんも受けられる。日本では主演男優賞を取るような役ではないかもしれないけど、実は非常に彼がかなめだったと思う。本当に良かったです。たぶん女優陣もみんなそう思っていると思います。

    --樹木希林さんについては?

    希林さんは、スタートの娘とのやりとりから、息子と夜の台所で話す一番暗い部分までの一人の人間の感情の起伏の見せ方というのを非常に計算されていて、この辺をどのくらいの明るさで言っておくと、ここがどう見えるか、みたいな設計図がきちんと書かれていたと思います。演技設計を演出の目線で持たれていたと思う。希林さんを撮れて良かったです。

    --私はこの物語を見て母のことを思い出しましたが、この物語を書こうと思った切っ掛けは何だったのでしょうか?

    ストレートに、自分も母親を亡くして、母親のことを書きたいなと思ったので。何か直接的ではないにしろ、自分の記憶の中にある母親の色んな言葉だったり、いいところだけじゃなくて、残酷だったり辛辣だったりする部分も含めて一人の人間として丸ごと描きたいなと思いました。一周忌が終わってすぐに脚本を書き始めてという感じですね。

    --脚本を書くときは一気に書くのでしょうか。それとも悩みながら書くのでしょうか。

    場合によります。ずっと悩み続ける場合もありますが、今回は一気に書きました。期間も一ヶ月かかってないぐらいです。ちょうど一昨年の秋毎週末に京都に行っていたんですけど、週末に一泊二日で4回行ってるうちに移動中の新幹線で書きました。

    --新幹線の中で書かれたということですが、脚本を書きながら何か音楽を聴いたりしますか?

    音楽を聴いてしまうと、頭の中で曲が鳴っちゃうんですよ。その曲ありきのシーンになっちゃうんで、その人に音楽を頼むことになるから危険なんです。それを前提にして書いてもいいんですけど、あまりやらないですね。でも僕は音楽はほとんど使わないのですが、使うところではピアノとかギターとか、何の音をかけるかはいつも決めています。その通りにならないこともあります。「ブルーライトヨコハマ」はどこかでかけようと最初から決めていました。

    --編集をご自分でやられていますが、そのわけは?

    僕はもともとテレビの人間なので、編集を切り放しての演出は考えられません。特にドキュメンタリーはディレクターが編集するのが普通なんですよ。編集はおもしろいので(笑い)、やらせてもらえるうちはやろうかなと。今はコンピュータでやっています。マウスは何とか自分でいじれるようになりました。

    --監督になろうと思ったきっかけは?

    なんだろうねえ。もともとは小説を書こうと思っていて、文章を書いて金になったらいいなあと思って、大学もそういう学部を選んで行ったんですけど、入った年の春に映画にはまってしまいまして、もう「映画」だと思っちゃったんですよ。だから映画の関係で何か飯が食えれば本望だなと思ったんだけれど、僕は映画サークルで自主製作をしていたわけでもないですし、なかなか大学を出て映画の現場に近づく手立てがなくて、とりあえずはテレビだということでテレビの製作会社を選んだんです。やってみたらテレビもおもしろかったので、いまだにテレビもやりたいなと思っていて。だから映画監督になったという意識がないんだよなあ。

    --大学に入って映画にはまったきっかけは?

    フェリーニですね。早稲田のそばにACTミニシアターという小さな劇場があって、年会費1万円を払うといつでも観られたんですよ。大学があまりにつまらなかったので、だいたいそこで時間をつぶしていました。そこでフェリーニの『道』と『カビリアの夜』の二本立てがあって、それを観てイタリア映画にはまりました。ロッセリーニとかアントニオーニとか。あとは銀座並木座で黒澤とか小津とか溝口とかを観たあたりから大学に行くよりは映画館にいる方が長くなりました。だから映画デビューとしては遅いですよ。10代終わりから20歳くらいですから。

    --イタリア映画といえば、ヴィスコンティはどうでしょうか?

    ヴィスコンティは「すごいのはわかるんですけど」っていう監督なんですよ。正直言うと、貴族の話とか全然わからないんだよね。ヴィスコンティの中では『ベリッシマ』とか『揺れる大地』とか初期の作品が好きです。

    --今影響を受けている監督はいますか?

    好きな監督はいっぱいいますが、僕は誰かの助監督についたわけではないので、影響を受けた監督というとあまりいないです。好きな監督はホウ・シャオシエンです。自分には親父のような存在です。フェリーニもいまだに好きですね。描かれる世界が小さくて。背後にある世界はもっと大きいんでしょうけど。うちは労働者階級なので、ブルーカラーの映画が好きなんですよ。ホウ・シャオシエンとか、ケン・ローチとか、そういうのが好きなんだと最近わかってきました。そういう意味で言うと、小津は庶民を描いたといわれればそうなのかもしれないけど、小津よりはやっぱり成瀬の登場人物の方がだらしなくて親近感があるんですよ。今回は撮る前に成瀬を観ました。

    --いつも映画を作る前に何か映画を観るようにしているのですか?

    なるべく映画を観て映画を作るのはやめようと思ってはいますけど、観て刺激になることも沢山あります。例えば日本家屋をどう撮るんだというときに、やっぱり小津を観たり成瀬を観たりすると気付かされることが多いです。今回みたいに町の風景と建物のセットをどういう風に組み合わせて行くかというとき、成瀬は技術的な意味でも非常に勉強になりました。

    --家の感じがとても良かったです。ふすまとか良かったですね。映画を観て改めて日本の家というものを意識しました。

    あれは美術が素晴らしいんですよ。もちろん照明も撮影も良いんですけど。今回は家が主役だからね。ただし今回は(カメラ位置が)正対してないんですよ。小津みたいに撮ってないんです。成瀬は全部(カメラ位置を)ひねるんです。理由はわからないけど、ひねりながらオープンとセットをうまくつないでいくんです。それを僕もやってみようと思ってひねってみたらうまくつながったんですよ。小津はそういう細かいことはしないんですよ。小津はつながりはどうでもいいんですね。

    --ラストシーンに引きの映像を持ってきたわけは?

    今回はほとんど家の中で展開する話だったから、どこで引きの絵を挟むかというのを考えていたので、ラストは引きだなと最初に決めていました。ラストに新しい家族が車に乗って帰って行くシーンで、墓地から見下ろせる町があって、電車が走っていて、その向こうに海が見えるイメージだけ最初に決めて、ロケハンでそれに近い場所を探しました。あれがラストではなくて、あの町が見つかったことがこの映画のスタートで、この風景の中で起こる話という風に作っていきました。

    --では最後に、映画を撮る上で大切なことを教えてください。

    ひとつは体力。あとは現場で色々なことを聞くことだと思います。監督として大事なのは口ではなく耳だと思います。僕は特に耳を使うようにしています。

    『歩いても 歩いても』場面写真
    『歩いても 歩いても』DVD
    (C)2008「歩いても 歩いても」製作委員会

    商品名歩いても 歩いても
    販売元バンダイビジュアル
    発売日2009年1月23日(金)
    価格3,990円(税込)
    特典■初回仕様
    ・特製ボックス
    ■初回封入特典
    ・特製ブックレット(16P)
    ・特製フォトシート(6P)
    ・イラストポスター
    ■映像特典
    ・メイキング(約30分)、特報、予告編

    (取材・構成:澤田)

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    10年前 2009/1/19 3:23:31
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